2020年にコロナ禍によって急遽オフィスが閉鎖され、強制的にリモートワークに移行させられたことは、長時間労働や事業計画上の悪夢として多くの経営者の記憶に刻まれている。しかし、コンサルティング企業のGartnerによれば、本当の困難がやってくるのはこれからだ。
規制が徐々に解除され、企業が従業員を職場に復帰させることを検討し始めると、コロナ禍に対応するための全面的なリモートワーク体制からハイブリッドな働き方へとスムーズに移行するために、先を見越した計画を立案する必要が出てくる。しかし、どんな形が最善なのかはまだ詳細は分かっていない。
これは、かなりの割合の従業員が、週5日のオフィス勤務に復帰することを望まない可能性が高いからだ。Gartnerは、2021年の終わりまでに、知識集約型の職業(ライター、会計士、エンジニアなど)に就いている知識労働者の半数以上(51%)が、少なくとも週に1日は自宅で仕事をするようになると予想している。
また数年のうちに、仕事の性格が変化して、リモートワークを選択できる割合が大きく高まるとの予想もある。
Gartnerのシニア調査ディレクターであるRanjit Atwal氏は、労働者の大部分はすでに快適な自宅から仕事にログインする目新しさに慣れたが、今後数カ月間でまた波乱を経験することになると述べている。
Atwal氏は、米ZDNetの取材に対して「人々が在宅勤務をしている現状が、本来あるべき進化の姿だと考えている人はいない」と述べている。「実際、そうではなかった。このような状況は、政府の取り組みやロックダウンによって起こったもので、企業にはほかに選択肢がなかった。しかし今や、選択の余地が生まれてきている」 と同氏は言う。
そこで最初に問題になるのは、新型コロナウイルスによる健康危機が終息したら、一挙にハイブリッドな働き方に移行した方がよいのかどうかだ。この問題については、まだコンセンサスはないようだ。多くの業界リーダーが何らかの形で在宅勤務を維持すると述べている一方で、Goldman SachsやJPMorganなどの大手金融機関は、できるだけ早く従業員を現場に戻したいと明言している。
Atwal氏は、リモートワークは(あるいは少なくともハイブリッドワークは)今後も残ると考えるようになっている。同氏によれば、労働者の大多数はコロナ禍以前にも在宅勤務を望んでいたし、今では、オフィスにいなくても労働者を信頼でき、生産性も維持できることが証明されているため、企業が新しい労働環境に移行することをためらう理由は少ない。
しかし、もしリモートワークが「世界的な危機に対応するための最後の手段」ではなく当たり前のことになれば、企業はすぐに新たな課題に直面することになる。