日本IBMは10月4日、企業のサステナビリティー(持続可能性)実現に向けて、現状の可視化から戦略の策定、施策の実装までを包括的に支援するサービスを始めると発表した。サステナビリティー成熟度診断と戦略策定支援のサービスから提供する。
サステナビリティー領域におけるIBMのサービス
今回のサービスでは、経営層やサステナビリティー担当者などへのヒアリングを行い、オペレーションやデータなど10種類の項目に基づく分析を通じて現状を可視化する。ここでは「順守」「適応」「改革」「先導」の4つの段階として成熟度を評価し、自社がどこに位置しているのかが分かる。これを基に今後自社が目指すべき姿を設定するとともに、現状とのギャップを洗い出して課題を整理し、優先順位付けをして、サステナビリティーの実現に向けた具体的な計画を立案する。
同日記者会見したパートナー 戦略コンサルティング サステナビリティー・オファリング リーダーの大塚泰子氏は、企業にとってサステナビリティーがこれまで社会に対する責任(CSR)として捉えられていたものの、現在はビジネスの継続性を脅かすリスクの観点からも対処すべきテーマになっていると説明した。
日本IBM パートナー 戦略コンサルティング サステナビリティー・オファリング リーダーの大塚泰子氏
例えば、二酸化炭素排出量の増加が地球の温暖化をもたらすという点では、極地の氷が溶けて海面上昇を引き起こし、将来的に低地にある事業拠点が水没して事業運営に支障が出る恐れがあるという。また、原材料資源の無秩序な獲得が環境を破壊したり、安定的な生産活動を妨げたりする恐れもある。貧困する国や地域の人々の人権などを無視した労働などでの搾取が信用や信頼を失墜させることがあるとする。
こうした企業のサステナビリティーを脅かすリスクはさまざまだが、各種の問題に国家の枠組みを超えた規制強化の動きが加速しており、大塚氏はサステナビリティーへの取り組みが現実的な喫緊の課題であると説く。しかし、日本では環境への意識が高い欧州市場でも事業展開するグローバル企業を除くと、多くはまだ現状把握から始める段階の企業が多いという。
「世界的には小売や流通などB2C(対消費者ビジネス)を手がける企業もサステナビリティーに取り組むが日本ではB2B(対法人ビジネス)を手がける企業が先進的とされる状況。まず可視化して最適化を図りたいとするのがボリュームゾーンになっている」(大塚氏)
IBMでは、企業がサステナビリティーを実現する上で「リーダーシップ」「テクノロジー活用」「エコシステムの形成」を重要にしているといい、今回のサービスでは「リーダーシップ」に力点を置いているという。なぜ自社がサステナビリティーを目指すべきなのか(Why)、そしてどうやって(How)実現していくかが勘所になるとする。
Howから先の部分が「テクノロジー活用」や「エコシステムの形成」に当たる。IBMには50年以上もの取り組みの実績とノウハウがあり、顧客に具体的な方策を提供するとともに、同業や業界を超えたエコシステムの実現も支援していくという。また、これら支援を一過性でなく継続的に提供することで、サステナビリティーの実現に寄与したいとした。
環境における現状を可視化するダッシュボードの例
大塚氏は、「例えば、二酸化炭素の排出削減のために再生可能エネルギーを調達すればコストアップになるので悩ましいといった懸念がよく聞かれるが、環境もビジネスも犠牲にしないことが大切。二酸化炭素排出の少ない原材料を調達したり再生可能エネルギーで工場を稼働させたりすることを通じて市場でのブランド力を高め、ビジネスをより成長させることができる。こうした取り組みをお客さまと共同で取り組みたい」と述べた。