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SAPが初のサステナビリティーイベント、「持続可能性はビジネス戦略」にシフト

末岡洋子

2021-05-10 06:30

 世界の商取引の77%が、何らかの形でそのシステムを使用すると言われるのがSAPだ。その影響力は大きく、責任も大きい。SAPは、持続可能性(サステナビリティー)への取り組みを10年以上前から進めているが、2020年には製品に実装、顧客企業の二酸化炭素(CO2)削減の支援を買って出た。そして、2021年は初のイベント「SAP Sustainability Summit」を4月28~29日に開催した。

持続可能性がテーマのイベントを開催する理由

 「地球が46歳だったら人類が生活するようになったのはほんの4時間前、産業革命はわずか1分前にスタートしたばかり。だが、(人類は)この1分間に30%以上の熱帯雨林を滅ぼしてしまった」――このイベントを想起したSAPで製品エンジニアリングを統括するThomas Saueressig氏はいう。

SAPで製品エンジニアリングを統括するThomas Saueressig氏
SAPで製品エンジニアリングを統括するThomas Saueressig氏

 Saueressig氏は、弱冠30代ながら、2年前にエグゼクティブボードメンバーに任命された若きリーダーだ。同じく30代でSAPの最高経営責任者(CEO)に就任したChristian Klein氏(2021年現在41歳)に持ちかけて実現したと明かす。

 環境への意識が高いと言われるドイツに本拠地があるSAPは、以前から地球全体を良くしたいというメッセージを打ち出してきた。2012年、同社の年次イベント「SAPPHIRE NOW」で、当時共同CEOを勤めていたJim Hagemann Snabe氏が、宇宙から捉えた地球の画像を背景に、「地球のさまざまな問題を、技術を使って変えることができる」と呼びかけたこともある。

 このフォーカスを全面に打ち出すようになったのは、Klein氏が2020年春にトップに就いてからだ。その後開催されたSAPPHIRE NOWでは、「Climate 21」イニシアティブを発表した。製品側では、「SAP Product Carbon Footprint Analytics」としてCO2排出量を測定・分析できる技術も発表した。このように、Klein氏の下、業務ソフトウェア大手のSAPは、持続可能性などの社会課題の解決を重要視する新しいベンダーを目指す。

 「SAPにとって持続可能性は重要なトピック。10年以上前から持続可能性の取り組みに着手している」というSaueressig氏、これまでのSAPの取り組みとして2014年から全ての自社データセンターを全て再生可能エネルギーに切り替え、「Integrated Report」として財務以外の数値も公開していることなどを紹介した。例えば、2020年のIntegrated Reportでは、「環境」セクションで、温室効果ガスの排出量、合計のエネルギー消費量、合計のデータセンター電気消費量を開示している。

 「気候変動は人類最大の課題だ。われわれはクラウドを含む製品全体のデータモデルを簡素化しており、企業がもっとサスティナブルになるためのイネーブラーを目指す」(Saueressig氏)

 Saueressig氏は、いま持続可能性に取り組むべき理由を幾つか挙げた。一つは地球温暖化の現象だ。「過去10年のうち7年は記録的な暑さだった。これは偶然ではない」とSaueressig氏。もう一つは消費者の行動だ。ここ数年で環境への意識は世界的に高まっており、環境に優しいことを重要な選択基準にする消費者が増えている。この他に、直前まで開催されていた気候変動サミットのような政治や規制の動き、そして、投資家の動きもある。

 そして最後に、従業員を挙げた。若者を中心に、ダイバーシティーやインクルージョンに加えて、目的意識を持って持続可能性に取り組む企業で働きたいという人が増えているというトレンドが世界レベルで見られる。「これらを考慮すると、気候変動に対して企業がいまアクションを取るのは自然なことと言える」(Saueressig氏)

三菱ケミカルが語る、バリューチェーンの取り組み

 2日間のイベントでは、Adidas、Volkswagen Group、BMW、Nestle、Shell、BP、Accenture、PwCなどの幹部が登場し、自社の持続可能性の取り組みや市場トレンドについて語った。その1社が三菱ケミカルだ。2日目のメインプログラムに、同社代表取締役社長の和賀昌之氏が登場した。

三菱ケミカル 代表取締役社長の和賀昌之氏
三菱ケミカル 代表取締役社長の和賀昌之氏

 廃棄物ゼロの「ゼロ・ウェイスト(Zero Waste)経済」について聞かれた和賀氏は、「これまでの世界は原材料が無尽蔵にあり、環境へのインパクトはないと考え、経済活動をしてきた」とし、「マインドセットの変化」が重要だという。「生活の方法を変える、廃棄を減らす。これは簡単ではない」と和賀氏。有効な方法の1つとして、教育・啓蒙活動を通じて人々の価値観を変えていくことはあるが、政府の政策や投資が不可欠だとした。

 ゼロ・ウェイストのためには、バリューチェーン全体を通じて相互にビジョンを共有することも重要だ。「消費者を含むバリューチェーン全体が、(ゼロ・ウェイストによる)コスト増を共有するソリューションを考えなければならない」と和賀氏は話す。

 三菱ケミカルの主事業である化学品や素材はバリューチェーンのスタート地点と言える。和賀氏は、「われわれは社会のビルディングブロックであり、その役割は大きい」と認め、カーボンフットプリントが小さく、簡単にリサイクルできる製品の提供だけでなく、CO2から素材などを再生産する技術の開発を業界の取り組みとして進めていることも紹介した。「CO2からプラスティックを製造できれば、カーボンネガティブな製品を提供できる。これは、ほかの産業がCO2排出量を減らす支援につながる」(和賀氏)

 イベント全体のテーマであるビジネスへの組み込みについては、同社のミッションを「化学の力で地球を救う、あなたと共に未来を創る」と打ち出し、サーキュラーエコノミー(循環型経済)を、製品とサービスで実現することを目指しているという。それだけでなく、組織面でも全社レベルのサーキュラーエコノミー戦略を担当するサーキュラーエコノミー推進本部をイノベーション所管に置くなどの変更を加えていることを紹介した。また、廃棄物の収集・処理などサーキュラーエコノミーの実現につながる日本と欧州の企業への投資を進めていることにも触れた。

 サーキュラーエコノミーを加速させるためには、(1)コストがかさむ傾向の強いサーキュラー製品への需要を増やすこと、(2)技術開発を通じてコストを下げる、(3)消費者の理解を促進する――ことの大きく3つが重要と和賀氏は指摘した。「食品のカロリー表示のように、環境へのインパクトを目に見える形で示すことができれば、消費者は環境に優しい製品の選択が簡単になる」と提案した。

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