SAP Sapphire

SAPの新CEO、「インテリジェントエンタープライズ」ビジョンを拡大

末岡洋子

2020-06-17 06:00

 SAPは米国時間6月15日、年次イベント「SAPPHIRENOW」のデジタル版「SAPPHIRENOW Reimagined」を開催した。最高経営責任者(CEO)として初のSAPPHIREに登壇したChristian Klein氏は、同社が掲げる「インテリジェントエンタープライズ」戦略を説明するとともに、気候変動に向けた意識改革も呼びかけた。キーワードは「対応力」「持続性」「収益性」だ。

気候変動に企業は責任がある

 SAPでは、2019年末に同社を9年間率いてきたBill McDermott氏がCEOを退任し、その後それまで最高執行責任者(COO)を務めていたKlein氏と米国ベースのJennifer Morgan氏とともに共同CEO体制を敷いた。前CEOのMcDermott氏も、当初は欧州ベースのJim Hagemann Snabe氏との共同CEO体制でスタートし、4年間にわたって共同CEO体制を維持した。だが新型コロナウイルス感染症(COVID-19)などで明確な指揮系統が重要であることを理由に、4月の早々にKlein氏が単独CEOとしてSAPを率いることが発表された。

SAPの新CEO、Klein氏。基調講演は6月15日東部夏時間11時スタートを予定していたが、トラブルで専用サイトからTwitterライブに切り替えた
SAPの新CEO、Klein氏。基調講演は6月15日東部夏時間11時スタートを予定していたが、トラブルで専用サイトからTwitterライブに切り替えた

 初の基調講演でKlein氏のメッセージは、インテリジェントエンタープライズへの変革だ。インテリジェントエンタープライズという言葉そのものは新しくないが、新型コロナ、米国に端を発した人種差別へ抗議などを受け、以前からSAPがメッセージに含ませてきた地球とそこに生きる人類が直面する課題に対するための「インテリジェンス」も含ませたように見える。

 「インテリジェントエンタープライズになることで、世界最大の課題を最大のチャンスに変えることができる」とKlein氏。

 SAPが考えるインテリジェントエンタープライズのキーワードは、「対応力」「持続性」「収益性」だ。新型コロナにより対応力があるかどうかを試されたが、対応力は収益性につながる。「革新的技術を使うことで、危機の前よりも競争力を強化した形で危機から脱することができる」と話し、予期しないことに対する準備につながるとする。

 では、持続性とはどういうことかーーKlein氏は、企業にとって新型コロナが最優先課題であることを認めながらも、「気候変動問題を見過ごしてはならない」と続ける。40万社の顧客を抱え、85%の取引が何らかの形でSAPを経由しているという立場を踏まえ、Klein氏は「業界が共同で取り組むことで気候変動問題を解消に向かうことができる」と呼びかけた。公益や農業といった主要な産業がデジタル技術を使うことで、「7.6ギガトンのCO2排出を削減できる」とKlein氏。これは5000億本の木と同じインパクトという。「現在われわれは転換点にある。新型コロナは、われわれが変化できることを示す機会となった。対応力があり、持続性があり、収益性のある企業への変革は可能だ」(Klein氏)

 なお、SAPは6月1日、「Climate 21」プログラムを発表している。持続性データの評価と分析を通じてアクションにつなげる。これによりCO2の削減を図るというものだ。Klein氏は、「コアビジネスアプリケーションにトランザクションと分析の両方の機能を構築することで、持続性のある企業になるのを支援する」と話し、SAPが備えるデータ収集、分析などの機能をフル活用することで、サステナビリティを自社のビジネス成功の指標にすることを提案した。

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