Microsoftがヘルスケア分野で多くの顧客を持つ音声認識サービス企業を2兆円余りで買収すると4月に発表してからおよそ半年。統合後の取り組み内容について、日本マイクロソフトが記者会見で初めて言及した。その「2兆円買収で得た新たな価値」について探ってみたい。
マイクロソフトによるヘルスケア分野での「2兆円買収」とは
写真1:日本マイクロソフト 業務執行役員パブリックセクター事業本部 医療・製薬営業統括本部長の大山訓弘氏
「現在開発を進めている『Nuance AI』を活用した音声データの構造化に関する取り組みについて、この機会に概略をお話ししたい」
日本マイクロソフトでヘルスケア分野を担当する業務執行役員パブリックセクター事業本部 医療・製薬営業統括本部長の大山訓弘氏は、同社が先頃オンラインで開いた同分野のデジタルトランスフォーメーション(DX)における最新の取り組みについての記者説明会でこう前置きして、その内容を話し始めた(写真1)。
会見全体の内容については関連記事をご覧いただくとして、ここでは大山氏が話した「Nuance AI」をめぐる取り組みに注目したい。なぜ、この話に注目するかと言えば、Microsoftが2兆円余りを投じてまで手に入れたかった技術およびソリューションとはどんなものなのか、大いに興味があったからだ。
改めてこの買収話を説明しておくと、Microsoftは米国時間4月12日、音声認識を軸としたAI(人工知能)技術とそのサービスを手掛けるNuance Communications(以下、Nuance)を197億ドル(2兆円余り)で買収すると発表した。上記のNuance AIとはこのことを指す。買収自体は今年内に完了する予定だ。
Microsoftが年間売上高15億ドル足らずのNuanceに巨額を投じるのは、ヘルスケア分野での実績と先進的なAI技術をを取り込むためだ。世界で1万の病院と50万人以上の医師がNuanceのサービスを使っており、米国の病院に限れば利用率は8割近くに上ると言われている。また、これまでAppleの「Siri」の基盤技術を開発するなど、技術力には定評がある。
Microsoft CEOのSatya Nadella(サティア・ナデラ)氏はNuanceの買収発表に当たって、「Nuanceはヘルスケアの現場に先進技術を提供するエンタープライズAIのパイオニアだ。『Microsoft Cloud for Healthcare』とNuance AIの組み合わせによってエコシステムをさらに拡充し、先進のAIソリューションをあらゆるプロフェッショナルに提供することで意思決定や連携の向上を支援していきたい」と述べている。