オーストラリア競争消費者委員会(ACCC)は、現在実施中の「Digital Platform Services Inquiry」(デジタルプラットフォームサービスに関する調査)の一環として、デジタルプラットフォーム市場における競争と消費者の懸念に対処するためにセクター固有の規制が必要かどうかを検討していることを明かした。
ACCCの会長を務めるRod Sims氏は現地時間10月15日、南オーストラリア大学(UniSA)とACCCの年次「Competition Law and Economics Workshop」(競争法および経済学ワークショップ)でスピーチを行い、「Competition and Consumer Act 2010(2010年競争消費者法)に基づくACCCの既存の権限により、われわれはデジタルプラットフォームに対して何らかの強制措置を講じることができるが、デジタルプラットフォームに関するACCCの調査で明らかになった競争と消費者の懸念に対処するため、既存のCCA条項に基づく強制措置に加えて、事前の規制も必要なのかどうかを現在検討しているところだ」と述べた。
セクター固有の規制を導入することは全く前例のないことではなく、例えば、オーストラリアは競争とアクセス機能に関連して、電気通信セクターに業界固有の法律を導入したことがある、とSims氏は説明した。
「そのような規制が必要だと判断された場合、バランスのとれた効果的な方法で有害性に対処できる規制をどのように設計すべきかも検討する」(Sims氏)
「重要なのは、この重大な問題に関する業界の見解を聞いて、連邦財務省と緊密に連携することだ」(Sims氏)
さらに、日本やEU、英国、米国など、デジタルプラットフォームの事前規制が「激しく議論」されている国々の世界的な動向を考慮すると、「既存の独占禁止法は、デジタル市場がもたらすさまざまな課題にうまく対応できていない」とSims氏は指摘した。
15日のスピーチの中で、Sims氏は合併法の改正に取り組む必要性や競争法案件に関して未来に備える必要性にも言及した。
「合併の管理は、競争を保護し促進するのに重要である。それは門番であり、一極集中が進むことによる悪影響から私たちを守ってくれる」(Sims氏)
「この国の競争の保護に真剣に取り組むのであれば、合併管理体制を可能な限り効果的に機能させること、そして、国際的なベストプラクティスと一貫性を持たせることが必要になる」
これらの提言は、ACCCのDigital Platform Services Inquiryの最終報告書の一部として、2022年9月に財務大臣に提出される。中間報告書は2021年9月に財務大臣に送付済みだ。その報告書は今後数週間以内に一般公開される予定である。
Digital Platforms Services Inquiryに注目が集まっている背景には、ACCCが先頃、広告テクノロジーサービスに関する調査を完了したことがある。この調査では、Googleが市場で圧倒的な地位を占めており、「競争に関する体系的な懸念」が生じているとことが明らかになった、とACCCは述べた。
広告テクノロジーに関する調査の最終報告書(PDFファイル)の一部として公開されたACCCの調査結果によると、広告テクノロジーサービスの提供をめぐる競争は、Googleが市場で支配的な地位を確立しているせいで、健全なものではなくなっているという。
「2020年には、広告テクノロジーのサプライチェーンを通して取引される広告インプレッションの90%以上が少なくとも1つのGoogleサービスを経由したと推定される。主要な広告テクノロジーサービスのすべてにおいて、Googleは圧倒的に最大規模のサプライヤーである」(同報告書)
「広告テクノロジーサービスにおけるGoogleの垂直統合と強みのおかげで、同社は10年以上にわたって、競争の減少と自社の支配的な地位の確立につながるさまざまな行為を実行することができた」
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。