「健康で豊かに生きる」ためにIT/デジタル技術をどう活用するか。この大きな社会課題に対し、富士通が新たな取り組みをプライベートイベントで、しかも新たなリーダーが明らかにした。その内容が非常に興味深かったので、ここで取り上げて考察したい。
Healthy Living事業を推進する4つの考え方とは
「あらゆる人のライフエクスペリエンスを最大化し、個人の可能性を拡張し続けられる世界を創る。私たちは『Healthy Living』と名付けた事業でテクノロジーを活用してこの世界を実現していきたい」
こう語るのは、富士通 執行役員常務でHealthy Living事業を担う高橋美波氏だ。同社が先頃オンラインで開催した「Fujistu ActivateNow 2021」において、「次のニューノーマル時代を健康で豊かに生きるためのイノベーションへの挑戦」と題した講演でのひとコマである(写真1)。
写真1:富士通 執行役員常務 グローバルソリューション部門デジタルソフトウェア&ソリューションビジネスグループ長でHealthy Living事業を担う高橋美波氏
「個人の可能性を拡張し続けられる世界を創る」―― 筆者はこの表現にグッと興味をそそられた。これまでこの分野は、個人としては受け身の話が多かった印象があるが、この表現には能動的なアクションにつながる可能性があると感じたからだ。高橋氏によると、この表現は図1に示すように、同社のHealthy Living事業のビジョンに掲げられているものである。
では、富士通が取り組み始めたHealthy Living事業の中身とはどんなものか。
図1:Healthy Living事業のビジョン(出典:富士通)
まずはその大もとを少し紹介しておくと、Healthy Livingは同社が先頃、「イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていく」というパーパス(存在意義)の実現を目指す新事業ブランドとして策定した「Fujitsu Uvance」において、2030年を見据えた社会課題を起点にした7つの重点注力分野の一つだ。Fujitsu Uvanceの内容については発表資料をご覧いただくとして、7分野については図2の通りである。
図2:Fujitsu Uvanceを構成する7つの重点注力分野(出典:富士通)
高橋氏によると、富士通のHealthy Living事業は、「Self-reliant」「Seamless」「Enhance」「Ignite」といった4つの考え方に則ったソリューションを提供する(図3)。
図3:Healthy Living事業を推進する4つの考え方(出典:富士通)
Self-reliantは、直訳すると「自立する」ことを指す。「自分の健康管理は自身で行い、予防に重点を置いた生活へとシフトしていく。自らの心身に向き合うことが大事だ」(高橋氏)という。
Seamlessは、直訳すると「継ぎ目のない」ことだ。「体調の異変については日常生活の中で早くから予兆が出ているケースが少なくない。そうした予兆をテクノロジーで常時チェックする。テクノロジーによって健康を見守るフォロワーが増える」(同)といったイメージだ。
Enhanceは、直訳すると「高める」あるいは「強める」。「新たな治療法などの情報が共有されて大きく広がっていけば、健康との付き合い方の選択肢も広がる。そうすれば、自分の生き方に沿った意思決定ができるようになる」(同)と。自分をエンハンスできるという意味だろう。
Igniteは、直訳すると「火をつける」。「身体や精神、五感、人との関係性などをテクノロジーで拡張し、制約を外して誰もが生き生きと活躍できる未来に向け、時間や空間をも超える取り組みへの可能性にイグナイトする」と同氏は熱弁を振るった。