シスコシステムズは10月21日、東京2020オリンピック(東京2020大会)での同社の取り組みについて説明会を開催した。シスコは同大会におけるネットワーク機器のオフィシャルパートナーとして、大会のネットワークをサポートした。
シスコシステムズ 代表執行役員会長の鈴木和洋氏によると、東京2020大会では競技会場が43拠点、本部や選手村などの大規模施設が3拠点と、オリンピック史上最多の拠点数を抱えての開催だったという。「この拠点間を信頼性の高いネットワークで結ばなくてはならなかった。競技データなどがサイバー攻撃などで改ざんされるなどあってはならないことで、ミッションクリティカル性の高いネットワークを構築する必要があった」と同氏は語る。
シスコシステムズ 代表執行役員会長の鈴木和洋氏
その中で、大会中はネットワークの可用性100%を達成できたという。東京2020大会で導入されたシスコ製品は2万2000と、約8000だったリオ大会と比べても約2.8倍。接続した機器の数は18万6000台におよび、合計1.6ペタバイトという過去最大のインターネットトラフィックを、24時間体制で同社のエンジニア約50人で支えた。
国内最大規模のIoTネットワークも構築した。6000台以上のCCTVと3000個を超えるセンサーを設置、これらを全て高速ネットワークにつなげ、集中監視センターからモニタリングを実施した。
オリンピック初のオールIP放送の制作も支援した。NBC Sports Groupの一部門であるNBC Olympicsが、今大会の番組制作で初めてオールIP放送を実施。そのネットワークにシスコのソリューションが採用され、編集や配信に貢献した。
さらに今回新たに取り組んだのは、データを活用したアスリート支援だ。シスコは、卓球の石川佳純選手および張本智和選手とアスリートアンバサダー契約を締結しており、2人をデータで支援した。大会前には対戦相手のこれまでの試合映像が視聴できるよう動画データをまとめ、各選手のパフォーマンスをはじめとする分析データを提供。また、大会中も試合直前まで次の対戦相手の映像が確認できるよう、視聴アプリを提供した。
このほかにも鈴木氏は、ダイバーシティーや人材育成を支援したことに触れた。ダイバーシティーの普及とサポートを行うプライドハウス東京レガシープロジェクトに対し、最上位スポンサーとして「Webex」や「Meraki」などのテクノロジーを提供したほか、サイバーセキュリティスカラシッププログラムにてさまざまな研修コースを提供し、サイバーセキュリティの人材育成に貢献したと述べた。
説明会には、今大会の男子卓球団体で銅メダルを獲得した張本選手と、女子卓球団体で銀メダルを獲得した石川選手も参加。特にデータが活用できた場面を問われ、張本選手は「ドイツのエース、Dimitrij Ovtcharov選手とは何度も対戦したことがあり、傾向は知っていたが、あらためて映像を見て試合を分析し、同選手の独特なサービスを研究した。その結果、最初はリードされたものの、2ゲーム目からは冷静に試合を立て直すことができ、逆転できた」と回答。
一方の石川選手は、「初戦シングルスの対戦相手とは一度も対戦したことがなかったので、試合前にはこれまで以上にサービス、レシーブ、コース取りなどの映像を確認し、試合に生かした」と語る。何度も対戦している相手の場合も、「特徴やクセは感覚で覚えているが、データを見るとイメージと違うこともあった。特定のコースが得意だと思っていた選手がそのコースでミスを重ねていたり、苦手分野だと思っていた部分で得点していたり、データを見てはっとさせられることもあった。自分のイメージとデータを見ながら戦術を立てることができた」と明かした。
メダルを抱える石川選手と張本選手(写真提供:シスコシステムズ)