インテルが東京2020オリンピックに提供した技術とは--ドローンや楽曲も

藤本京子

2021-07-21 07:00

 インテルは7月20日、同社が東京2020オリンピック競技大会に提供するテクノロジーに関して説明会を開催した。

 インテルは、2018年の平昌冬季オリンピックから国際オリンピック委員会(IOC)のワールドワイドオリンピックパートナーを務めている。米Intel セールス&マーケティング統括本部 副社長 兼 インテル オリンピック・プログラム・オフィス 本部長のRick Echevarria氏は、「インテルはIOCのパートナーとして、オリンピックでの新技術採用を促進する重要な役割を果たしている。大会のパートナーと協力し、アスリートのパフォーマンス向上から大会の運営、都市インフラの改善、競技の配信方法に至るまで、さまざまな側面でインテルのテクノロジーを統合する」と述べた。

 具体的に同社が貢献したテクノロジーの内容については、インテル 代表取締役社長の鈴木国正氏が解説。無観客開催が決まった大会ではあるが、インテルでは「テレビやオンラインでの視聴体験向上につながる技術を提供したほか、円滑な大会運営をサポートするプロジェクトにも協力した」としている。

 視聴体験の向上に向け同社が提供した技術には、「3Dアスリート・トラッキング(3DAT)」や「インテルTrue View」といった技術がある。

 3DATは、インテルが開発したAI(人工知能)によるコンピュータービジョンソリューションで、陸上の短距離種目などの再生時に使用される予定だ。同システムは、4台のカメラで選手のフォームや動きを取り込み、インテルXeonプロセッサーに最適化された姿勢推定アルゴリズムを適用、選手の動きのバイオメカニクスを分析する。これにより、加速度や時速、選手名、順位などの競技データをオーバーレイ表示させることが可能になるという。

米Intel セールス&マーケティング統括本部 副社長 兼 インテル オリンピック・プログラム・オフィス 本部長 Rick Echevarria氏
米Intel セールス&マーケティング統括本部 副社長 兼 インテル オリンピック・プログラム・オフィス 本部長 Rick Echevarria氏

 一方のインテルTrue Viewは、「従来にはない没入型のスポーツ視聴体験を実現する技術だ」と鈴木氏。同技術はバスケットボール競技での使用が予定されており、15日間で52試合を撮影するという。

 仕組みとしては、会場全体に高解像度の小型カメラを設置し、コート全体からプレーを撮影する。縦、横、奥行きを記録した立体映像データ(ボクセル)を、インテルXeonプロセッサーベースのサーバーと、インテルCoreプロセッサーを搭載したPCで処理し配信する。また、ボクセルのレンダリングにより、360度のリプレイや、肉眼では判定が難しかったプレーの確認も可能になるとしている。

 またインテルは、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会が実施する「TOKYO 2020 5G PROJECT」に、NTTおよびNTTドコモとともに協力することも表明している。同プロジェクトは、5G(第5世代移動体通信システム)ネットワークの高速で大容量、低遅延という特性を生かし、新しい視聴体験を提供するというもので、水泳競技、セーリング、ゴルフの3競技で活用される。同プロジェクトにおいてインテルは、「インテルXeonスケーラブル・プロセッサーを搭載したハードウェアプラットフォームを提供する」(鈴木氏)という。

 さらにインテルは、東京2020大会公式応援ビートとなる「2020beat」という楽曲も提供した。これは、インテルのAIソリューションプラットフォームを活用して制作された楽曲で、「Tokyo 2020 “Make The Beat!”」という応援プロジェクトで選手を応援するためのもの。2020beatに合わせて手拍子やダンスをした応援動画をSNSに投稿すると、競技会場のスクリーンなどで上映されるという。

 2018年の平昌オリンピックでは、1200台以上のドローンによるライトショーを実施したインテルだが、今回の大会でも最新型のドローンを用意する。鈴木氏は、最新型ドローンを手にとって紹介し、「1機の重さは約300g。高精度LEDにより、鮮明で境界のない明るさが実現する。また、特に細かいグラフィックスの表現ができるようになっている。ソフトウェアのさらなる進化とこのハードウェアにより、安定性の向上とバッテリーの長寿命化が実現した」と説明している。

最新型のドローンを手にするインテル 代表取締役社長の鈴木国正氏
最新型のドローンを手にするインテル 代表取締役社長の鈴木国正氏

 この他にもインテルは、大会運営をサポートする「IOCデータ利活用プロジェクト」に参加している。同プロジェクトは、今大会のデジタルトランスフォーメーション(DX)を実現させ、安心安全な大会運営と、次回以降の大会の運営効率化に貢献するというもの。例えば今回は、インテルのプロセッサーとAIプラットフォームをベースにIOCのデータプラットフォームを構築、スタジアムや駐車施設など所定のエリアの混雑状況を計測し、収容能力に到達した場合はリアルタイムに警告、担当者に知らせるという。

 Echevarria氏は、「今回の大会のために開発されたイノベーションの多くは、最終的には今後の製品やサービスに生かされる。例えば、3DAT技術は既にアスリートのパフォーマンス向上に役立てようとする取り組みが出てきている。将来的にはこのようなテクノロジーを使い、怪我の予防に活用するなど、スポーツ以外の分野でもさまざまな人がメリットを享受できるようにしたい」と述べた。

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