富士通は、2025年度を最終年度とする中期経営計画に取り組んでいる。その初年度となる2023年度通期(2023年4月~2024年3月)の連結業績が4月25日に発表された。
売上収益は前年比1.1%増の3兆7560億円、営業利益は同52.2%減の1602億円、調整後営業利益は同11.6%減の2836億円、税引前利益が同52.1%減の1781億円、当期純利益が18.3%増の2544億円と増収減益となった。同年度の初めに発表した見通しや期中に発表された修正計画に対しても未達であり、最終利益の増益も、欧州における事業運営体制の再編に伴う税効果として想定外ともいえる1300億円強のプラス効果によるものだ。決して手離しで評価できる内容ではない。
だが、代表取締役社長 CDEO(最高経営責任者)の時田隆仁氏は、この中期経営計画を「従来のプロダクトおよび請負型SI(システムインテグレーション)を中心とする事業形態から脱却する事業モデルの変革」と語っており、その狙い通りとすれば、成果は着実に生まれているといっていいのかもしれない。その象徴となるのが、「Fujitsu Uvance」である。
Fujitsu Uvanceは、2023年度の売上収益目標を3000億円としている。それに対して、実績は3679億円と大幅に過達し、前年比84.0%増という驚くべき成長を遂げた。サービスソリューション全体に占める売上構成比も、前年度の10%から17%にまで拡大。時田氏は、事業モデルの変革が着実に進んでいることを示して見せた。
内訳は、「Sustainable Manufacturing」や「Consumer Experience」などによって構成する「Vertical」の売上収益が1163億円で、前年度の150億円から大きく成長した。また、「Business Applications」や「Hybrid IT」などで構成する「Horizontal」の売上収益は2515億円で、こちらも前年度の1850億円から成長している。
時田氏は、「従来型のSIからFujitsu Uvanceを中心にしたオンクラウドやビジネスアプリケーション、クロスインダストリーといったビジネスへの変革が進んでいる。特に2023年度は、Verticalのオファリング強化を進め、売上構成比が30%を超えた。『クロスインダストリーでSX(サステナビリティートランスフォーメーション)に貢献する』という新たな発想から生まれたFujitsu Uvanceによるお客さまとの実践例がグローバルに生まれており、手応えを強く感じている」と話す。
また、代表取締役副社長 CFOの磯部武司氏は、2023年度にUvanceが大きく成長した理由の一つに、GK Softwareの買収効果を挙げた。GK Softwareは、小売向けSaaSを提供するドイツの企業で、2023年5月に富士通が買収した。同氏は、「GK Softwareのサービスは、Fujitsu Uvanceのオファリングに合致し、年間で300億円程度のプラス影響があった」と明かす。
富士通 代表取締役社長 CEOの時田隆仁氏(左)と代表取締役副社長 CFOの磯部武司氏
Fujitsu Uvanceの成長は、今後も加速することになりそうだ。今回発表されたFujitsu Uvanceの2023年度受注額は、前年比80%増の4493億円で、ここでも大幅な成長を見せている。また、Fujitsu Uvanceの2024年度売上収益目標は、前年比22%増の4500億円。そのうちVerticalで1800億円、Horizontalで2700億円を見込んでいる。
磯部氏は個人的な期待としながら、「これまでの取り組み実績や受注残の積み上がり方を見ても、2024年度は1.5倍ぐらいの成長が十分狙える。オファリングのリリーススピードを上げること、標準化率50%以上を目指すこと、提供するリソースを確保することが成功要因になる。今の計画の一段上を狙いたい」と意気込む。
Fujitsu Uvanceでは、2023年度に37種類のオファリングがリリースされた。2024年度は64種類のオファリングがそろうという。また、AIプラットフォーム「Fujitsu Kozuchi」を22種類のオファリングに活用し、今後はAIを活用したオファリングも拡大していくことになる。