デル・テクノロジーズは10月21日、「中堅企業DXアクセラレーションプログラム 成果発表会」を開催した。同プログラムは2020年2月から奈良先端科学技術大学院大学(NAIST)と共同推進する最新技術の概要や活用方法を習得して、中堅企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)推進を目指す取り組みである。9社の各DXプロジェクトは7社がゴールを迎えた(関連記事1、関連記事2)。
ブロックチェーンを用いた「臨床データ共有プラットフォーム」
CDISC-SDTM Blockchain Teamは、ブロックチェーンを用いた「臨床データの共有プラットフォーム」構築を目指している。複数の製薬企業や医薬品開発業務受託機関(CRO)、システム開発企業などから集合した約8人で構成し、各自の専門性を生かしながら、製薬業界におけるブロックチェーン技術の活用を主題に活動してきた。
臨床データ共有プラットフォームに着手した理由は「臨床に関わる(臨床試験やカルテ、ゲノムなどの)各種データがDB(データベース)化されており、データ統合によって医学的知見が得られる可能性がありつつも、データの二次利用時は個人情報保護の課題が残ってしまう」(担当者)
そこでブロックチェーン技術を用いたデータ二次利用プロセス向上案を検討するための試作品で運用の妥当性を検証し、得た知見から論文投稿や発表することで、データ共有の新たな選択肢を業界へ提案すると説明した。
臨床データ共有プラットフォームは、P2Pでデータを分散管理する「Interplanetary File System(IPFS)」と、1つの暗号鍵に対して複数の復号鍵を設定できる「Attribute-Based Encryption(ABE)」とブロックチェーンを組み合わせている。IPFS上のデータをブロックチェーンで場所とアクセス権限を管理し、データアクセス権はABE暗号で構築した。
担当者は「管理者不要でDBを分散管理、運用でき、データ所有者と利用者を分離する仕組みを構築可能。データ操作履歴はブロックチェーンに書き込まれるため、改竄も不可能。未検証だが、第三者機関が中央集権型で運用するよりもコストダウンする可能性が高い」と利点を説明した。
今後も実運用に近い工程のシステム構築と検証に取り組みつつ、「プロジェクトで得た知見をもとに論文投稿もしくはカンファレンスでの発表を行い、データ共有の新たな選択肢の1つとして業界へ提案。また、特許出願済みの内容に出願請求項を追加」(担当者)する予定だ。
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老朽化したERPの見直しとDXを並行させるイグス
ポリマーや樹脂のケーブル保護管やベアリングなどを開発、製造するイグス(墨田区、従業員数89人)が取り組むプロジェクトは「AI(人工知能)によるデータ精度向上および災害対策サービス」。
同社は企業名と住所を変換するシステム試作品を開発し、手動での試験運用を進めてきた。企業名変換は24万2407の作業件数の作業時間を「2.3時間に短縮し、実働126日で289.8時間の削減効果につながった」(担当者)