世界最高峰のラグビーリーグ「スーパーラグビー」で歴代最多の優勝数を誇るのが、ニュージーランドのラグビーチームのThe Crusadersだ。最強チームを支えるものは何か――、The Crusaders 最高経営責任者(CEO)のColin Mansbridge氏によると、それは「カルチャー」だという。パートナーシップを結んでいる米Inforの日本法人、インフォアジャパンがオンラインで開催した説明会で語った。
The CrusadersのCEOを務めるColin Mansbridge氏。前職は銀行員で20年ほど勤めていた。日本でもラグビーのプロコーチを務めた経験もある。「大企業でもチームでも、成功する要因は同じ」という
The Crusadersは、ニュージーランドのクライストチャーチを拠点とするラグビーチームだ。ニュージーランド代表All Blacksでキャプテンを務めたRichard McCaw氏やKieran Read氏、現キャプテンのSamuel Whitelock氏、それにDaniel Carter選手などが在籍していた名門だ。
Mansbridge氏は、2018年からThe CrusadersのCEOを務めている。同氏によると、チームは「自分たちの文化を誇りに」「お互いのために(For each other)」を大切にしているという。例えば、クラブハウスやオフィスに来ると選手も職員も、「全員が目を合わせたフィストバンプ(拳を突き合わせるしぐさ)をしてから、仕事やトレーニングを始める」という。
同氏はこれを「コネクト」の確認と説明する。選手が先発メンバーに選ばれないなどの難しい局面があっても、会話がネガティブにならず、ポジティブに進めることができるという。ファンやコミュニティー、パートナーもコネクトの対象に含まれる。「コネクトはわれわれの文化であり慣習、そして中核をなすものだ」
The Crusadersの強さの秘密は「カルチャー」(出典:インフォアジャパン)
コロナ禍でもコネクトのための努力を惜しまなかった。コミュニケーションは少人数でのオンライン会議が中心となり、フィストバンプの“儀式”も画面越しに続けた。
コネクトが生むものは「団結」だ。「必ずしもベストプレーヤーがそろっているわけではないが、全てのプレーヤーが長期的にまとまっている」とMansbridge氏は話す。チームの団結力は外部からのお墨付きも得ている。オーストラリアのファンド運用会社Platinum Asset ManagementとGAIN LINE Analyticsがオーストラリア、ニュージーランド、ニューギニア島などの地域のスポーツチームを対象にした調査で、The Crusadersはベストスポーツチームに選ばれた。試合のパフォーマンスやクオリティーなどを総合的に分析したもので、評価のポイントは「団結」だったという。
「ラグビーでは攻撃でも守備でも、前にいる人、後ろにいる人がどこにいるのか理解しておくことが重要。信頼関係ができていなければならない」(同氏)
The Crusadersが大切にしているもう1つのことが「アイデンティティー」になる。「選手が自然に自分らしく振る舞えることが大切。チームのシステムに合わせるのではなく、選手を包み込むような枠組みを用意するのがチームの役割」とMansbridge氏は説明する。その狙いは、選手に自分の能力を最大限に引き出してもらうためだ。
The Crusadersでは、データの活用も進めている。GPS端末を選手に装着して走行距離や速度を計測したり、リストバンド型の活動量計で心拍数をモニタリングしたり、ドローンを使って試合映像を分析したりしているという。この領域でInforの技術が生かされており、「収集したデータを意味のある洞察に変え、選手やコーチがすぐに活用できるようにしている」(同氏)という。
選手が装着するGPS端末
Inforとは、2015年にパートナーシップを締結し、データ活用のほかに顧客関係管理(CRM)でも支援を受けている。同社のCRM製品とキャンペーン管理ソリューションを使うことで、2017年のチケット販売は10%増になったという。
また、「Infor University Rugby Scholarship」として、毎年学生1人の大学進学を支援している。その1人が2015年の奨学生であるTom Christie選手。The Crusadersのアカデミーに3年間在籍し、奨学金を使って大学で学ぶことができた。U20(20歳以下)ニュージーランド代表でルーキーにも選ばれるなど、将来を渇望されている選手だ。「Inforはブランドパートナーであるだけでなく、テクノロジーの提供や人材への投資も行っている」とMansbridge氏は評価した。