NortonLifeLockのセキュリティソフトウェア「ノートン360」に搭載される暗号通貨のマイニング機能「Norton Crypto」をめぐり、米国で懸念の声が起っている。
Norton Cryptoは、2021年6月に米国で提供が発表され、「安全かつ容易に仮想通貨をマイニングできるよう設計されている」という。PCがアイドル状態でイーサリアムをマイニングでき、クラウドベースのユーザー専用ウォレット「Norton Crypto Wallet」に保存される。機能を利用するには、ユーザーがノートン360のダッシュボードから同意(無効化もダッシュボードから設定するとの)し、その上で基準(NVIDIAのグラフィックカードと6GB以上のメモリーを搭載したWindows)を満たしている必要がある。
「Norton Crypto」(出典:ノートンライフロック)
同機能への懸念は、ニュースサイト共同編集者のCory Doctorow氏の1月5日のツイートをきっかけに広がり、セキュリティニュースサイトのKrebs on Securityなどが報じた。「同機能が勝手にインストールされる」といった間違った指摘が飛び交ったり、「暗号通貨を不正にマイニングするマルウェアが横行する中で、セキュリティソフトがこうした機能を提供するくらいなら、防御機能をもっと強化すべきではないか」といった意見が出されたりしている。一方で、「暗号通貨のマイニングでマルウェアのリスクを考えれば、セキュリティトソフトで提供される方が安心ではないか」という評価する声もある。
この他にも、暗号通貨のマイニング自体でPCの電力を消費するため、地球環境の問題が世界的に注目される中ではこの機能を提供する同社の姿勢に疑問の目が向けられたり、マイニングされた暗号通貨の取引コストなどを同社がコントロールするわけではないため、ユーザーに本当に利益があるのかといった声も上がったりしている。
Krebs on Securityは、暗号通貨の経済的な価値の可能性については一定の理解を示しつつ、「暗号通貨に詳しくない数百万ものユーザーを暗号通貨の世界に招くものになる。個々のユーザーがセキュリティやプライバシーに関する意識を高めなければならない」と、暗号通貨のマイニング機能を展開する上ではユーザーへの配慮と慎重さが必要だと指摘した。
なお同社の日本法人によれば、日本市場向け製品にはNorton Crypto機能を搭載しておらず、今後日本で同機能を提供するかどうかは未定とコメントしている。