現在、世界のさまざまな業界、規模の企業がマルチクラウドの利用を進めています。本連載は、HashiCorpが実施した調査を結果まとめた、「クラウド戦略実態レポート(State of Cloud Strategy Survey)」から、企業のクラウド活用状況や今後の利用方針、課題点、クラウドの成功に関連する主要なテクノロジーなど、さまざまな洞察を解説していきます。第3回は、クラウド活用におけるコストの問題について取り上げます。
業界や地域で異なるクラウドコストの考え方
企業がクラウドやマルチクラウドに注力しているかどうかは、それらにかける費用が参考になります。企業はマルチクラウドの取り組みに多額の投資を行っていますが、それが期待通りの効果を上げているとは限りません。調査結果によると、回答者の半数強がクラウド推進の阻害要因にコストを挙げる一方で、4分の1がクラウド導入の効果にコスト削減を挙げています。
しかし、コストに対する懸念を示した割合は、金融サービス業界では42%であるのに対し、エンターテインメント・メディア業界では60%です。また、クラウドの年間予算においても、ソフトウェア・サービス企業の3分の1は10万ドル未満でしたが、通信事業者では4分の1以上(27%)が1000万ドル以上を投資しており、消費者・小売(22%)、エンターテイメント・メディア(21%)が続きました。
企業全体では、マルチクラウドの取り組みの年間予算について、4分の1以上(27%)が10万ドル未満と回答しています。200万ドル以上と回答したのは3分の1(33%)で、このうち15%は1000万ドル以上、6%は5000万ドル以上としています。ただし、クラウド予算を理解するには、さらに詳しく調べる必要があります。
マルチクラウドの取り組みの年間予算
例えば、基本的に大企業は中小企業より多くの金額を投資できます。調査結果でも、年間予算が10万ドル未満の企業は、中小企業では約62%を占めますが、大企業ではわずか7%でした。逆に同1000万ドル以上の企業は、大企業では34%、中小企業では1%でした。
地域別に見ると、最もクラウドに投資しているのは、北米の回答者であり、40%が年間200万ドル以上、18%が1000万ドル以上でした。10万ドル未満のデータは、中南米(37%)、欧州(32%)、アジア太平洋(30%)という結果でした。このように、クラウドに対するコストの考え方は、業界や地域によって異なることが分かります。なお、回答者の39%が2020年にクラウド予算を使い果たしており、クラウド支出の追跡とコントロールの複雑さも明らかになっています。