企業は常に成長圧力にさらされている。そして、規制当局や投資家、顧客が二酸化炭素排出量に対する懸念を強め、企業がサステナブルな成長を求められるようになってから、それなりの時間が経過した。
圧力の高まりもあって、産業界もようやくその声に耳を傾けるようになってきている。新たに就任したGoogleのサステナビリティ担当ディレクターによれば、このようなトレンドが強まっている理由の1つは、単純に経済の方程式が変化したことだという。
Google Cloudのグローバルサステナビリティ担当マネージングディレクターであるJustin Keeble氏は、米ZDNetの取材に対して、「最大の加速要因はイノベーションだと考えている。イノベーションが新技術を生かすための新たな手段をもたらし、本物の変革を起こしている」と述べている。「それによって、サステナブルな選択肢の方がよい選択肢になった。サステナビリティを取り入れる方が、商業的な意味でも合理的だからだ」
企業がサステナビリティ目標を取り入れるようになると、Googleのようなクラウド事業者にとっては、ビジネスチャンスが増えることになる。クラウド事業者は、提供している「気候変動に関する説明責任を果たすためのツール」の数を増やし、良質なデータをより多く提供することによって、サステナビリティ目標を達成しようとする顧客を手助けしている。
Keeble氏は、適切なデータがあれば大きな変化を達成できると見込まれる業界の例として、エネルギー産業、消費財産業、金融サービス業界を挙げた。
同氏によれば、最初に取りかかるべきは消費財産業だという。これは、生産工程やサプライチェーンのあらゆるステップに、カーボンフットプリントを削減できる余地があるからだ。例えばUnileverは、Google Cloudを利用して、世界中から調達している原材料との結びつきが強い生態系の衛星写真を入手している。同社は、そのデータを使って、よりサステナブルなサプライチェーンを構築している。
「サステナビリティはデータで解決できる課題だ」とKeeble氏は言う。「その第一歩は、意思決定者の視界を改善することだろう。それによって、デザイナーは製品を設計する際により良い判断を下せるようになり、調達担当者は調達時にうまく判断できるようになり、生産現場の担当者は資源の利用効率を最適化することができる」
一方、エネルギー産業にとって、サステナブルなビジネスモデルへの移行は、新たな収益源を得るチャンスにつながる。
「欧州の電力企業は、炭素集約度の高い発電事業から、インテリジェントな電力網、スマートグリッド、分散型エネルギーソリューション、電気自動車、EV充電インフラなどの新たな事業分野に重心を移している」とKeeble氏は言う。「それらの新技術は、すべてネットワークへの接続を必要としているため、クラウドプロバイダーは、それらのインフラの間に入ってインテリジェンスを提供し、価値創造を可能にするという大きな役割を果たすことができる」
同氏によれば、銀行業界にも同様の課題があるという。融資先や投資先のポートフォリオに対するサステナビリティの影響をより良く管理するという現実的な要求があるからだ。
Keeble氏は、Googleに移る前には14年にわたってAccentureで働いており、同社のグローバルサステナビリティサービス事業の創設に関わったメンバーでもある。同氏には、さまざまな業界の最高経営責任者(CEO)や企業に対して、サステナブルなビジネスや、ESG(環境・社会・ガバナンス)の優先順位について助言してきた経験がある。Keeble氏は、サステナビリティに関する課題を、ビジネスにとって不可避のもう1つの課題であるデジタルトランスフォーメーションになぞらえて説明した。
同氏は「企業は、サプライチェーンや、業務運営や製造プロセスについて、そして製品やサービスのラインアップについて、本質的な見直しを行う必要があり、劇的な変革を進める必要がある」と述べている。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。