仕事と職場のデジタル化が進む中で、技術のノウハウを持つ従業員は、働いている業界に関係なく、自身のキャリアを発展させるうえで明らかに優位に立っている。
これには非常に多くの要因が関係している。たとえば、自動化の進歩により、工場のフロアやバックオフィスで、高度なスキルが必要ない定型的なタスクを機械とソフトウェアが人間の代わりに実行できるようになった。また、ハイブリッドワークとリモートワークが定着したことで、仕事のルールが変わり、従業員が日常的に使用するツールやソフトウェアも変わった。従業員がリモートワークや同僚との非同期作業で生産性を維持するためには、優れた問題解決能力、組織スキル、時間管理能力はもちろんのこと、ある程度の技術的知識が必要だ。
では、新しい仕事の世界での成功に必要な要素とは、どんなものだろうか。また、どのようなスキルの習得に取り組めばいいのだろうか。
技術スキルの価値がさらに上昇
技術スキルの需要が高いことは周知の事実だ。あらゆる業界の企業が、ITインフラストラクチャーのモダナイゼーションができる人材、新しいアプリを開発できる人材、拡大し続けるサイバーセキュリティの脅威を防ぐことができる人材を、喉から手が出るほど欲しがっている。
たとえば、企業の採用担当者は常にソフトウェア開発者の獲得を狙っている。こうした状況はしばらく続いているが、この2年間は、COVID-19のパンデミックによってビジネスニーズの創出や加速があったため、ソフトウェアスキルの需要がさらに高まった。
企業が求めているのは、専門的なスキルだけではない。UdacityとIpsosが欧州で2000人以上のマネージャーと4000人の従業員を対象に実施した調査では、経営者の59%が即戦力となるデジタル人材が不足していると回答した。同様に、英国政府による2021年の調査でも、46%の企業がデータスキルを必要とする職種の人材獲得に苦労していることが明らかになった。現在、労働市場では、データ関連の新しい求人が増加している。急速に進化する労働経済で成功を収めるのは、技術に精通した従業員だろう。
しかし、企業は技術スキルだけを必要としているわけではない。企業が候補者に求めるようになったのは、チームをまとめて、生産性を高め、急速に変化する労働環境を乗り切るための支援ができる資質や特質だ。COVID-19のパンデミックの混乱を切り抜けるうえで、これらの資質が不可欠なものとなった。
Robert Halfの「2022 Salary Guide」によると、最高情報責任者(CIO)が強く求めているソフトスキルは、弾力性、コミュニケーション、適応力、プロジェクト管理、ビジネス洞察力だという。
同人材紹介会社によると、特に中堅と上級レベルの技術者は、ビジネスパートナーになることを期待されるようになったため、自身の戦略と活動、それらがビジネス全体に及ぼす影響を明確に伝えられる必要があるという。そのため、優れたコミュニケーションスキルと対人スキルの価値がかつてないほど高まっている。これは特に、パンデミック時代の働き方への対応として、デジタルソリューションの迅速な採用やスケールアウトを余儀なくされてきた企業にとって重要だ。
「以前は存在しなかったようなテクノロジービジネスを手がける企業が、現在では存在する」。Robert Halfの正社員紹介サービス/テクノロジーのディレクターを務めるPhil Boden氏はこのように述べた。
「利害関係者と良好な関係を築ける優れたビジネスパートナースキルやコミュニケーションスキルを持ち、企業にうまくなじむことができるが、技術的なスキルは持たない人もいる。そうした人には、チャンスを与えてくれる企業が必要だ」
近年、テクノロジー業界の性質が劇的に変化した。企業の成功のために社内で必要とされる仕事と役割の性質についても同様だ。
「現在のテクノロジー分野には、明白な職種以外にも、ありとあらゆる職種が存在する」。人材紹介会社Harvey Nash Groupでスコットランド、英国北部、アイルランドのリージョナルマーケティングディレクターを務めるRhona Carmichael氏はこのように述べ、例として、プロダクトマネージャーやプロジェクトマネージャー、ビジネスアナリスト、UI/UXテスターなどの職種を挙げた。「分析や技術のスキルに秀でた人であれ、どちらかというとコミュニケーション能力が高く優れた感情的知性を備えた人であれ、あらゆる人に適した仕事が、今のテクノロジー分野にはある」