本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉を幾つか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、ミロ・ジャパン 代表執行役社長の五十嵐光喜氏と、ガートナージャパン シニアディレクター 兼 アナリストの川辺謙介氏の発言を紹介する。
「発言しない人がいるような議論の乏しい会議はやめよう」
(ミロ・ジャパン 代表執行役社長の五十嵐光喜氏)
ミロ・ジャパン 代表執行役社長の五十嵐光喜氏
チームコラボレーション用オンラインホワイトボードプラットフォーム「Miro」を提供する米Miroの日本法人ミロ・ジャパンは先頃、事業および製品の戦略についてオンラインで記者説明会を開いた。五十嵐氏の冒頭の発言はその会見で、出席者全員が発言する会議を実現するMiroの特徴を逆説的に述べたものである。
会見の内容については速報記事をご覧いただくとして、ここでは冒頭の発言に注目したい。また、今回の会見は、ミロ・ジャパンが国内で本格的に事業を展開し始めた2021年11月にオンラインで開いた会見から二度目になるが、2021年11月26日掲載の本連載記事「ミロ・ジャパン社長に就いた五十嵐光喜氏に意気込みを聞いてみた」に一度目の会見内容のエッセンスを記したので参照していただきたい。
五十嵐氏は今回の会見でまず、「世界で選ばれているMiroの価値を日本企業の皆さまにお届けしたい。企業の力の源泉である社員一人一人の知見や創造性を、時間と場所を超えて一つにしていきたい」と、ミロ・ジャパンのミッションを紹介。これを掘り下げる形で、同氏は図1を示しながら、次のように話した。
図1:Miroが実現するコミュニケーション(出典:ミロ・ジャパン)
「日本の企業がかつて世界を席巻していた頃は、『ワイガヤ』という言葉に象徴されるように、会議でも出席者全員が自分の考えや意見を出し合いながら議論を進めていた。かつての日本企業は『エンゲージメント力』が非常に強かったといえる。ところが、その後、世界のビジネススピードがどんどん速くなるにつれて日本企業は競争力を徐々に失ってしまい、元気のなさが、会議でも発言しない人がいるような議論の乏しいものになって表れた。それがコロナ禍のリモートワークで一層浮き彫りになった印象がある」
その上で、同氏は「このままでいけない。本来のワイガヤ文化を取り戻せば、日本企業は社員一人一人が持つアイデアを生かせるはずだ。Miroはそれを実現できる環境を提供していきたい」と力を込めた。
五十嵐氏の説明を聞いていて、筆者は先頃取材した経営コンサルタントの話が頭に思い浮かんだ。企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)の取り組みに精通するそのコンサルタントは、企業のDXに向けた行動変容の具体例として「会議はレビューでなく、ハンズオン形式でやる」ことを挙げた。
今の日本企業で多い会議形式は、確認作業が中心のレビューだが、そのコンサルタントは「今やデジタルで物事がリアルタイムに動く時代にレビューをするだけでは全く追いつかない。みんなで考えながらハンズオンでどんどん決めて進めていかなければ、グローバルでの競争に太刀打ちできない」と警鐘を鳴らした。
この言葉を踏まえて考えてみると、Miroはまさしく「デジタルハンズオンツール」ではないか。冒頭で紹介したMiroの代名詞「チームコラボレーション用…」が少々長いので、ぜひ五十嵐氏に新たな代名詞として提案してみたい。