これまで、デザインチームとソフトウェア開発チームは常に同じ部屋で作業するようにはなっていなかった。また、現代の技術を加味したとしても、常に仮想空間を共有して作業するようにもなっていなかった。しかし、ユーザーと顧客がさまざまなデジタル上の選択肢を有するようになったこの時代において、アプリケーションはエレガント、かつ使いやすく、そして可能であれば、空気のように目に見えない存在になっている必要がある。
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デザインと開発のつながりが強固になっていくというのは、ソフトウェアの世界が向かっていく道を左右する多くの変化のうちの1つでしかない。ソフトウェアチームの一員になるということは、ハイブリッドな形態で他の人々と連携しつつ、かつてないほど小さな単位で機能を構築していくということを意味している。
これは、Cisco Systemsの最高情報責任者(CIO)であり、IBMの元CIOでもあるFletcher Previn氏の言葉だ。同氏は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)時代の到来を受け、Cisco自身のソフトウェア運用を刷新した人物だ。
Previn氏はCiscoのニューヨークオフィスでのインタビューにおいて、「私は、ユーザーエクスペリエンス(UX)と成果に軸足を置いて物事を進めていくために、デザインチームを組織し、IT部門内に組み込んだ。われわれは、IT部門から外に向かっていくのではなく、ユーザーの側に立って開発を進めている」と述べるとともに、「人々が何かと格闘する時間というものはすべて、彼らの雇用目的を達成するための作業の邪魔でしかない。このため、われわれはこうしたエクスペリエンスに焦点を当て、環境から摩擦を取り除き、人々が最高の仕事をできるようにしている」と述べた。
同氏は、最近になるまでは多くの企業にとって、デザインとエクスペリエンスを担当するチームが直接、開発者と作業するという形態は、「エクスペリエンスファースト、ソリューションセカンドという視点から開発を考えた本当に斬新なコンセプトだった」と付け加えた。さらに同氏は、「しかし、時代遅れのぎこちないエクスペリエンスが許容される余地は小さくなってきている。目標は、人々が必要としている物事を、彼らが意識せずとも利用できるようにするところにある。そしてハイブリッドワークを実現するというのは、IT部門に課された一連の重要な課題であり、セキュリティやリモートアクセス、働き方、文化を踏まえた上で、正しく解決する必要がある行為なのだ」と続けた。
デザインコミュニティーとITコミュニティーが完全に分け隔てられている場合もしばしばあるが、Previn氏はアジャイル開発において両者が密接に作業しなければならないと考えている。同氏は「UXチームがプロジェクトのコンテンツをデザインしたり調査すると、より良い結果がもたらされることをわれわれは認識している」と述べ、「正しく実施したい高い価値のやり取り」がある場合、「デザインチームを参画させる緊急性が最も高くなる」と続けた。
デザイン思考はソフトウェア開発の場で起こっている数多くの重要な変革の1つ、すなわちコーディングという考え方から既存のコンポーネントを組み立てるという考え方に向かう変化にすぎない。