東急建設は2月21日、建築資材に製造時に発生する二酸化炭素(CO2)の排出量を積み上げ式で算出するツール「積み上げ式CO2排出量算定シート」を公開(要登録)した。独自の工夫で作業の効率化と算定誤差の最小化を実現し、従来は社外秘だったが、「公開によりお客さまに信頼性の高い評価結果を提供し、同じ目的をもつ他企業にも普及拡大していきたい」(同社)としている。
同社は、2022年2月に独自に工夫した積み上げ式の算定手法を基に今回のシートを開発し、2022年度から受注した新築建築工事を対象にCO2の排出量を社内で算定しているという。
同社によると、建築資材の製造時のCO2排出量の算定方法は、主に概算式と積み上げ式があり、積み上げ式は、低炭素材料などCO2低減の取り組みを反映できるメリットがある。ただし、積み上げ式による算出には幾つかの課題もある。
まず、一般的な手順では「数量拾い」の難しさがあるという。建物には膨大な建築資材が使われ、材料も建物ごとに異なることから、正確な数量を拾い出すことが非常に難しいとする。さらに、活動量当たりのCO2排出量を用いる「排出原単位」も課題になる。積み上げ式で算出する際に使う排出原単位が有償提供されることが多く、無償の産業連関表ベースもあるが大元が金額ベースで算定されるため、積み上げ式に適用しても概算となり積み上げ式を使う意味が無くなるという。
また、積み上げ式に対応した排出原単位を使っても、掲載の単位が建築工事で通常扱う単位と異なることが多く、単位を換算する手間がある。建築資材に割り当てる排出原単位が圧倒的な不足もあり、建物に特殊部材が多く使用される実態を考慮して仕方なく代替えで割り当てることが非常に増えることから、誤差が起きてしまうという。
こうした状況から積み上げ式でCO2排出量を算出しても誤差や手間が大きく、同社の経験から算出された数値が異なる方式での数値と弁解の余地なく比較されてしまうこともあるとのこと。このため独自に積み上げ式の算出方法を工夫した。
算出イメージ
数量拾いにおける問題では、拾い出す項目を同社における重量構成の97%以上を占める上位20品目を含めた26品目に限定した。重量の上位だけでなく、見積もりの内訳から数量を取り出しやすいことや、積み上げ式に対応した排出原単位も考慮して品目を選定した。
排出原単位には、積み上げ式に対応した産業技術総合研究所の「IDEAv3」を基本的に使用し、上記26品目について単位換算した同社の標準原単位データベースを採用する。それ以外は、26品目の合計値に補正係数を掛けて算定するようにした。これらについては社内ワーキングを立ち上げ、定期的に見直しを行い、精度を高めているという。