筆者が先頃、世界最大級の地熱発電所を訪れる旅の中で体験したように、アイスランドの溶岩原に立てば、テクノロジーの持続可能性の向上は解決に向けて順調に進んでいる課題だと、容易に信じることができるだろう。
水力発電や地熱発電から空冷式データセンターまで、そして欧州中の企業がアイスランドの持続可能なコンピューティングリソースを利用できるよう新設された海底ケーブルなど、アイスランドのテクノロジーエコシステムは、より持続可能な未来への道筋を示している。
しかし現実には、持続可能性の潜在能力を理解してもらうための道のりは、決して平坦ではなかった。テクノロジーを使用する人々の気構えは、より環境に優しいITを作り出すという課題と同じくらい重要だ。
筆者はこの旅で、データセンターを専門とするatNorthで最高商務責任者(CCO)を務めるGisli Kr.氏に会った。同氏は2009年からアイスランドで持続可能なテクノロジーの開発に取り組んでいる。2009年は、コンピューティングパワーの源について考えることなどめったにない人が世界の大半を占めていた時代だ。
当時、Google検索が何かと関連付けられることはあまりなかった、とGisli Kr.氏は語る。「コンピューターがバッテリーで動いているというだけの認識だった。ブラウジングを始めると稼働を開始するあらゆる活動の背後にデータセンターがある、という広い視点に立つことはなかった」
Gisli Kr.氏によると、atNorthが最初に実施したことの1つは、ウェブ検索をカーボンフットプリントの観点から定量化することだったという。同社はまた、オンラインで視聴される人気動画にも注目し、どれだけの二酸化炭素が排出されているかを示した。
それは独創的なアイデアだったかもしれないが、大きな支持を得られなかった。「当時、われわれは活動家とみなされていた」とGisli Kr.氏は語る。
「実際に、市場参入戦略とマーケティングメッセージに関して、少し課題を抱えていた。当時、持続可能性が重要だという主張に反論する人はいなかっただろう。皆が『もちろん持続可能性は重要だ』と言うが、誰も行動を起こそうとしなかった」
それから10年以上が過ぎて、認識に顕著な変化がある。
だが、現在もすべての人が溶岩原の地熱発電所や水力発電(同じくアイスランドで豊富)を利用できるわけではない。そして、テクノロジー利用の持続可能性に関する問題は、テクノロジーを動かす電力源だけにとどまらない。
Gisli Kr.氏は、持続可能性が取締役会における重要な議題になったと語るが、あまりにも多くの経営者が環境への懸念を積極的な行動になかなか変えようとしないことを示す証拠も別にある。
人材紹介会社のNash Squaredは、2022年末に発表した年次デジタルリーダーシップレポートにおいて、持続可能性が意思決定プロセスで果たす役割が大きくなるとの予測を示した。
しかし、デジタルリーダーの約4分の1(23%)は、事業における持続可能性の役割がごくわずか、あるいは全くないと考えている。
さらに、テクノロジーを使用して自社のカーボンフットプリントを大きな規模で測定しているデジタルリーダーは、わずか22%だ。