経営戦略から見たビッグデータの核心

ビッグデータにおける組織のあるべき姿

辻 大志(バーチャレクス・コンサルティング)

2013-07-12 07:30

 情報テクノロジーの分野において「ビッグデータ」というキーワードがかなり浸透した。しかし、企業経営の現場では言葉だけが躍り、このキーワードへの期待と疑念という両極端の反応が見られる。本連載では、企業経営の観点からビッグデータのとらえ方や企業経営への生かし方について考察し、経営戦略上の核心に迫る。

 前回は、データの「取得」「分析」「共有」という3つのプロセスに沿って、ビッグデータの運営モデルを考察し、それぞれの運営モデルを描く際に重要となる視点を整理した。では、それらの運営モデルも含め、ビッグデータ活用をどのような体制で運営していくべきであろうか。本稿では、ビッグデータ活用による恩恵を最大化するための組織の体制や運営について議論する。

 事業環境が変化すれば、それに合わせた組織体制が議論されるのは当然だが、新しい技術要素が出るたびに、「これからの情報システム部門の在り方」や「今後求められる最高情報責任者(CIO)像」といった話題が持ち上がるのも今ひとつ現実感がない。

 確かに、1つの技術要素の普及のみによって、組織に影響を及ぼすことはまれと言ってもよく、毎度のように組織体制や組織運営について議論されるのはおかしいだろう。しかし、今、われわれは、そういった議論をせざるを得ない大変化の渦中にいる。それは当然ながら「ビッグデータ」のみを指しているわけではない。

 本連載は、ビッグデータに主眼を置いているが、それ以外にも「クラウド」「スマートデバイス」「ソーシャルメディア」などが同時並行的に急速な成長と発展を続けている。これらの影響により、企業の事業運営も変化を余儀なくされており、当然、その変化に合せた新たな組織体制や組織運営が議論されるべきときにある。

 すなわち、これまで新しい技術要素が出るたびに幾度となく組織体制や組織運営というテーマが騒がれたが、今こそ、新たな情報技術環境に適した組織体制や運営方法を検討し、組み立てる必要がある。

組織体制、運営における検討要素

 組織にかかわる検討においては、Strategy(戦略)、Staff(人材)、Skill(スキル)、Style(風土)、Shared Value(価値観)、Structure(組織構造)、System(仕組み)という7つのS、さらにまとめると4つの構成要素を整理することが重要である。組織は、「人・要員」の集合体である。人の集合体は独自の「文化・風土」を有する。それらは、明確な「戦略」を共有する必要があり、それらを支える「仕組み」が必要である。

 ビッグデータ活用による恩恵を最大化するための組織体制や組織運営を検討するに当たっても、この4つの構成要素を整理することで、目指すべき絵姿が明確になる。以下、これらの4つの構成要素ごとに、ポイントとなる観点を挙げていきたい。

図1
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