クラウドを「検討したが利用しない」企業が減少--利用形態も多様化

田中好伸 (編集部)

2013-07-08 12:59

 IDC Japanは7月8日、4月に実施したクラウドのユーザー動向調査の結果を発表した。国内企業のクラウドの認知度、利用率は堅調に増加しているという。

 クラウドは現在、SaaSやパブリックラウド、プライベートクラウド、業界特化型といった配備モデルで提供されている。調査からは、すべての配備モデルで認知度が向上しており、クラウドに対する印象も低コストと肯定的な意見が多く見られるとしている。

 クラウドの利用や検討状況で2012年の調査(4月実施)では「検討したが利用しない」と回答する企業の割合が、2011年の調査(5月実施)と比較して大幅に増加した。東日本大震災の影響で、ITの災害対策を含めた事業継続強化(IT-BCP)を実現するために、注目を集めるクラウドをにわかに検討したが、技術的あるいは管理的な課題から短期間では、クラウドを利用できないと判断する企業が多かったことが背景にある。

 今回の調査では、「検討したが利用しない」との回答が大幅に減少し、「興味があり、情報を収集中」の回答が増加した。このことは、クラウドの課題を理解した上で、情報を収集する企業の増加を表しており、今後の市場の成長を促進する要因と予測している。


2011~2013年のパブリッククラウドの利用検討状況(出典:IDC Japan)

 プライベートクラウドは、これまでユーザー企業内に自らの資産として構築することが一般的な導入形態として考えられてきた。近年では、“ホスティング型プライベートクラウド(Dedicated Private Cloud:DPC)”として、ベンダーが所有するIT資産を活用し、ユーザー占有のクラウド環境をサービスとして提供する形態の発展が見られるようになっている。

 ベンダーが持つクラウド環境の構築と運用のノウハウ、高い堅牢性に対する期待から事業者データセンター(データセンターサービス)の需要も高まっていると説明。プライベートクラウドであっても、その形態は多様化の傾向にあると表現している。

 現在、一部の先駆的企業は、クラウドを活用して新しいビジネスを開拓している。だが、多くの企業はクラウドは既存システムを効率化するための手法として考えていると分析している。企業のIT支出にかかわる意識を、削減することで経営を効率化する“守り”から、投資による事業拡大を目指す“攻め”に変化させることは容易ではないと説明する。

 IDC Japanの松本聡氏(ITサービスリサーチマネージャー)は「ベンダーは“顧客志向によるソリューションの強化”“技術志向によるプラットフォームの強化”といった施策を積極的に進めることで、顧客の意識変化を促すことが重要」とコメントしている。

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