IDC Japanは6月25日、国内エンタープライズアプリケーション(EA)ソフトウェア市場予測を発表した。ここでのEAは、エンタープライズリスク管理(ERM)や顧客情報管理(CRM)、サプライチェーン管理(SCM)、製造管理アプリケーションを対象にしている。オンプレミス型とSaaS型の売り上げを合算したものを市場規模として算出している。
2012年の国内EAソフトウェア市場は前年比3.7%増の2918億8600万円。2012年の成長率が最も高かったのは6.8%増を記録したCRM。2011年を上回る成長率となった。売上構成比が最も大きかったのは、前年比2.9%増だったERM。国内企業のグローバル展開に伴うシステム刷新ニーズとグループ企業を含めた経営の高度化ニーズが市場をけん引したという。
2012~2017年の国内EAソフトウェア市場は年平均成長率が4.3%で推移し、2017年には3599億8200万円に達すると予測している。セグメント別のCAGRは、ERMが4.2%、CRMが5.0%、SCMが3.9%を見込んでいる。各セグメント別からSaaS型の売上額を抽出してCAGRで見ると、ERMが15.7%、CRMが8.3%、SCMが16.8%と予測。現時点の市場規模は小さいが、今後の伸びが期待できるとしている。
ユーザー企業では“クラウドファースト”という考え方が浸透しつつあるSaaS型CRMをのぞけば、EAソフトウェア全体の売上額に占めるSaaSの比率は、現状ではごく一部を占めるにすぎないと説明している。
この背景には、中堅から大手のクラウド活用手段として、販売管理や生産管理のなど既存の業務プロセスが変化し、業務効率が低下するリスクが懸念されるSaaSよりも既存の業務アプリケーションをIaaS/PaaSに移行する手段を選択する傾向が強いためという。
IDC Japanの浅野晋平氏(ソフトウェア&セキュリティリサーチアナリスト)は「今後、SaaS型EAソフトウェアの市場投入を検討しているベンダーは、低コストや短期導入といった価値訴求だけでなく、中小規模のユーザー企業とその販売パートナーに対して、より付加価値の高い導入シナリオと販売シナリオを提供していくことが求められる」と提言している。