サイボウズ、「kintone」の料金体系を変更--パートナービジネスを拡充

Emi KAMINO

2013-12-11 13:43

 サイボウズは12月10日、2014年の販売戦略発表会を開催した。2012年にクラウド戦略を掲げ、IaaS「cybozu.com」をはじめ、グループウェアの「Garoon」「サイボウズOffice」などに加えて、個別の業務への対応を可能にするPaaS「kintone」も提供している。2014年に新たに導入する新価格体系や今後の課題や目標などが明かされた。

 kintoneは、現在までに有料契約社数約1000社を数えるという。現時点で税別の月額料金880円で販売しているが、2014年4月からは“Light”と“Standard”の2つの料金体系に分け、それぞれ月額780円と1500円で提供していく。

 Standardは、APIやJavaScriptによるカスタマイズ機能が利用可能で、従来のサービスを継承するもの。新価格適用以降は、現在の料金よりも1.7倍ほど値上がりすることになる。新設されるLightは、APIやJavaScriptのカスタマイズを除いた基本機能のみを提供する機能限定版で、従来よりも手頃な価格を設定することで新規ユーザーの獲得を目指すのが狙いだ。


サイボウズ 代表取締役社長 青野慶久氏

 サイボウズ代表取締役社長の青野慶久氏によると、現在の既存ユーザーの90%以上がLightに該当すると言い、「価格を下げることにより顧客の裾野を広げるためのLightと、もっと深く使いたいというユーザー向けには割増価格のStandardというように、縦と横を広げていくのが戦略のイメージ」と説明。新料金体系の適用は2014年4月以降となり、既存ユーザーと3月までの契約は、5年間現行の料金を据え置くとしている。

 kintoneの普及速度を加速させるための戦略として、パートナー協業を促進する取り組みを強化していく方針を打ち出した。具体的には、パートナー経由でのkintoneの販売を強化し、2011年末にはすべて直販だった販売実績を2012年に19%、2013年に31%へと増加させた間販比率を加速させ、2013年に約40件の実績となったkintone連携策を増大させていきたいとしている。

 2014年に最も注力していく項目として挙げられたのは、kintoneによるSIビジネスの強化だ。kintoneが提供しているAPIは、短期間で手軽にシステム開発が可能なるのがメリットだが、今後はこれを通してSI事業者にサービス型のSIビジネスを提供していきたいという。

 「単発受注型のこれまでのSIビジネスでは、開発工期が短いというのはSI事業者にはデメリット。しかし、これからは顧客の要望にスピーディーに応え続けるというのがサービスの在り方だという風に発想を変えていく必要がある。売り切り形の単発受注ではなく、継続型のサービスを展開していくことで、顧客との持続的な関係性と収益性につながる」(青野氏)

 kintoneのビジョンとして“日本のSIビジネスの未来を創る”を掲げる。その理由として青野氏は「SIビジネスの分野で日本的な作り込み型のビジネスを強みに活かしていきたい」と語る。

 「SIビジネスの分野では日本は欧米に完敗している。それは、パッケージ型を重視する欧米に対して、日本は作り込みを重視する。作り込み型のビジネスというのは、どうしても時間がかかって簡単にできないことが難点。逆に言えば、作り込みの時間が短期化できれば武器になる。そういう発想で辿り着いたのがkintone。大規模導入への対応や拡張性、情報の集約といった既存の開発ツールの弱点をすべてクリアにしたkintoneなら、作り込みならではのメリットが生かせる。kintoneにより日本のSIビジネスをサービス型にシフトさせて世界展開を図りたい」と今後の目標も明かした。

 cybouzu.comの有料契約者数は、提供開始から2年間で5000社に到達。青野氏は「国内では最大手の部類に入っている。4年間クラウド事業に徹底投資してきた結果と言っていい。2014年にはトップに躍り出る」と、今後のさらなる顧客獲得に意気込みを見せる。

 2013年12月期連結決算の第3四半期(7~9月期)の売上高は37億7800万円、営業利益は6億8700万円。青野氏は「クラウド事業単体ではまだ赤字だが、営業利益は前年の約1.5倍で全体としては上向き」と自信を見せる。10月の売上高は4億3300万円で、前年同月比では18.9%増の成長。「4月以降は前年同月比で15%以上の成長を続けている。クラウドが安定してきたことが成長の要」と、同社がこれまで推し進めてきた戦略に対する手応えを語った。


クラウドサービスのcybozu.comで新しい成長段階に入ったとしている

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