Java標準化の中核を担う指導者集団Executive Committee--。米Sun Microsystemsが主催し約950人のメンバーを持つJava標準化機関JCP(Java Community Process)による選挙によって選出する組織であり、Java標準の作成に大きな影響力を持つ。2005年9月22日、来日中のオンノ・クルイト(Onno Kluyt)JCP議長と3名のExecutive Committeeが、JCPの意義とJCPでの活動内容を語った。
JCPが実施している作業は、Java技術の標準化である。J2EEやJ2SE、J2MEなどのJava仕様を作成する。JCPのメンバーは個々のJava仕様の案をJSR(Java Specification Request)と呼ぶ形式で提案する。JCPのメンバーは約270のJSRを作成し、このうち約3分の1をJava標準にした実績がある。年間の提案数は40〜45個に及ぶ。
個々のJSRはすべて、仕様、リファレンス実装、テストプログラム(Technology Compatibility Kit)の3つを作らなければならない。仕様を作っただけでは標準とは呼べず、動作する実装例や、新規に実装するソフトベンダーが仕様に沿っているかどうかを調べるテストプログラムを用意して初めてJava標準になるという流れである。
標準化機関としてあるべきルールを定めている点についてオンノ・クルイトJCP議長は、「ルールは存在するが、ルールは必要であると認められたからルールとして成立するに過ぎない。官僚主義のためにある官僚主義などはありえない。例えば古くなって必要がなくなったルールがルールとして存在し続けることはない」と、ルールの正当性を説いた。
Executive Committeeを構成する1社、フィンランドのNokiaでJava基盤の標準化を担当するペンティ・サボライネン(Pentti J Savolainen)氏はJCPのルールに共感し、「Nokiaはルールを作成するためにJCPに参画した」と語る。同社は携帯端末向けのJ2ME仕様を構成するのいくつかのJSRを標準化した実績を持つ。
同じくExecutive Committeeである米BEA Systemsのエドワード・コブ(Edward Cobb)アーキテクチャ&スタンダード担当副社長は、今後のJCPのあり方について「標準化とイノベーションの折衝をどうするかが課題」とまとめ、「ユーザーを抱えると変更を加えるのが難しくなる。成功すればするほど、標準化のプロセスは遅くなる」と、JCPが標準化にじっくりと時間をかけて取り組んでいる現状を説明した。
とはいえ今後のJCPは、JCP以外のJavaコミュニティ、特にイノベーションを起こしている草の根コミュニティーなどと協力していく必要があるという見解を示した。Java標準以外を利用するユーザーの選択肢も視野に入れ、「15社が固まっているJava標準は、1社で全部を供給するIT企業と競争していく必要がある」と意気込んだ。
Executive Committeeの最後に登場した独SAPでNetWeaver標準部門副社長を担当するMichael Bechauf氏は、言語の構成要素である文字、辞書、文法の3要素を比喩に、Java仕様をビジネスに結び付けるための仕組みに触れた。「Java仕様は文字に当たる。文字を使って表現した、従業員や顧客、取引先、受注や出荷などのオブジェクトの集合が辞書に当たる。辞書自体はデータ構造に過ぎず、これに意味を持たせる必要がある。これがパターンだ」(Michael Bechauf氏)と、Javaを用いた業務プロセスの作成・実行基盤の重要性を説いた。