富士通と富士通研究所は10月19日、100nm未満の光スポット径を得ることが可能な熱アシスト磁気記録ヘッド向け積層型光素子を発表した。富士通では、今後この光素子を記録/再生用ハードディスク(HDD)ヘッドと一体化し、2012年ごろの製品化を目指す。
熱アシスト磁気記録は、記録時に加熱して記録媒体の保磁力を下げ、高密度な磁気記録を実現する技術。この技術を応用するHDDの記録ヘッドには、微細な光スポットを発生する積層型の加熱用光素子を組み込む。
光素子はHDD記録/再生ヘッドと一体化する必要があり、低コスト化には、通常のHDDヘッド作製時に用いられるようなウエハ基板に薄膜を形成する量産プロセスが望ましいという。しかし、薄膜で作製した従来の光素子には、ビームが十分に絞れないことや、ビームの形状が歪みを持つなどの問題があった。
富士通と富士通研究所は、「可能な限り薄くし、高効率に光を通せる材料」(両社)である酸化タンタル(Ta2O5)による光透過層を作製し、これを複数の層で挟んだ構造の積層型光素子を開発した。両社は「入射光を薄膜で絞るため、簡単で、スポット径の制御も容易な構造」と説明する。
作製した光素子に波長400nmの光を入射したところ、88×60nm(半値全幅)の微細な光スポットを確認した。「積層型で100nmを下回る光スポットは世界初」(両社)という。また、光利用効率は17%あった。
「今回開発した技術により、熱アシスト磁気記録用HDDヘッドに適した光素子が可能となった」(両社)