SAPジャパンと日本ビジネスオブジェクツは2月26日、今後の戦略に関する共同記者会見を行った。両社の日本法人の代表者がそろって会見を行うのは、2007年10月にSAPによるBusiness Objects(BO)の買収が発表されて以来初。
SAPジャパン、代表取締役社長兼CEOの八剱洋一郎氏は冒頭、2010年を見据えたロードマップとして、エンタープライズアプリケーション分野におけるSAPのビジネス領域を倍に広げるとともに、従来からの「SAP Business Suite」「Industry Solutions」といった領域に加え、「Business Process Platform」「Small Medium Enterprise」、ならびに「Business User Solutions」といった新たなソリューション領域の売上を、全体の50%以上に拡大するというSAPの戦略を説明。「BOの統合も、この戦略に沿ったもの」とした。
「SAPの伝統的なコア事業は、ヒト、モノ、カネの分析ツールとしてのERP。これは過去の実績をきわめて正確にレポートできるツールだが、一方で、過去の結果から未来の戦略を立案するためのツールには弱点もあった。SAPとBOのツールが組み合わされることで、行動の結果から戦略を組み立て、次の行動に移すというPDCAサイクルが確実に回るようになった」(八剱氏)
SAPはこれまで、自社の成長戦略を「オーガニックグロース」と表現していたという。これは、積極的なM&Aに頼らず、自社の中での成長を目指すスタイルであり、その点でオラクルやマイクロソフトの成長戦略とは対照になるものだ。今回のBOの買収について、八剱氏は「SAPの過去の戦略を否定するものではない」と強調する。自社による努力と買収によるポートフォリオの強化について、実現すべき要件、スピードなどを勘案した結果、今回は特別な判断を下したというのが、今回の買収に関する同氏の見方だ。
なお、BOは今後もSAPに吸収されることなく、独立した企業体として事業を続けていく方針だ。これは、SAP以外のソリューションを利用しているBOの顧客を今後ともサポートするという意思の表れという。日本ビジネスオブジェクツ代表取締役社長の印藤公洋氏は、「現状、BOユーザーの約40%がSAPの顧客で、60%はその他のパッケージや自社開発。今後もこれらの顧客を維持していく」とした。
SAPとBOで、競合する一部の製品ラインについては、「ユーザーそれぞれのニーズに合わせる形で併存させていく」とし、早急な統合は行わない方針を示した。現状の両社のツールは補完関係にあるという認識の元で、両社がそれぞれの製品を提供しつつ、両社製品の良さを生かした新たな製品開発のための投資を行っていくという。