「次の10年で4つのトレンドがIT業界を変える」--Gartner Symposiumにて

藤本京子(編集部)

2010-10-25 20:24

 ガートナー ジャパン主催のカンファレンス「Gartner Symposium/ITxpo」が10月25日、東京都内にて開幕した。3日間の日程で行われる同イベントは、今回が国内15回目の開催となる。オープニングの挨拶に立ったガートナー ジャパン 代表取締役社長の日高信彦氏は、「ガートナーでは、企業のプロセスが最適化されているか、IT投資は適正か、投資のリターンは見えているか、投資のリスクは何か、また新しいテクノロジの存在やそのテクノロジのビジネスへの影響は何かなどを検証し、ITのブラックボックスをできるだけホワイトボックス化していく」と述べ、このイベントを通じてこうした「見える化」と、企業の戦略強化、変革、発展を支援するとした。

Sondergaard氏 米Gartner Research シニアバイスプレジデントのPeter Sondergaard氏

 基調講演に登場したのは、米Gartner Research シニアバイスプレジデントのPeter Sondergaard氏だ。同氏は、経済がまだ不安定で、景気の後退が深刻化している中でも、この20年で1990年代には普及していなかったPCや携帯電話があらゆる場面で利用されるようになり、20年前には一部のUnixユーザーや技術者の間だけで使われていたインターネットが情報通信のデフォルトになるなど、大きな変化が起こったと指摘する。

 「いまやYouTubeに過去2カ月間でアップロードされたデータ量は、米国の3大テレビ局がこの60年間に流したデータ量よりも多くなっている。Wikipediaは2001年にローンチしたばかりだが、日々4300もの記事が作られている。Facebookのユーザーも5億人に達し、米国の総人口より多くなった。現在の携帯電話は、1965年にマサチューセッツ工科大学で使われていた1台のコンピュータの100分の1の価格にもかかわらず、1000倍パワフルで10万分の1の大きさになった。本当に大きな変化だ」(Sondergaard氏)

 こうして発展した21世紀において、「情報は経済やビジネスを動かすもので、私たちが想像する以上の力を持っている」とSondergaard氏は述べ、この情報社会で次の10年に起こるであろうトレンドについて語った。

 そのトレンドとは、クラウドコンピューティング、ソーシャルコンピューティング、コンテキストアウェアコンピューティング(Context Aware Computing)、そしてパターンベースストラテジ(Pattern-Based Strategy)の4つだ。

 まずクラウドコンピューティングについてSondergaard氏は、「拡張性と弾力性のあるインターネットを基盤にしたITサービスで、革新と変化をもたらすもの」と説明する。同氏によるとクラウドコンピューティングはEビジネスと同等の影響力があり、経済モデルをも変化させるため、「ITの利用者と提供者との新しい関係を作り、すべての業界を変えていく」としている。

 ソーシャルコンピューティングについては、「エンターテインメントやマーケティングのあり方、そしてカスタマーサービス、プロダクトマネジメントの形まで変える」という。また、「ソーシャルコンピューティングが基盤となって世界や文化にも変化が起こり、企業にも影響を与えるだろう」とSondergaard氏は述べ、「今日の企業に存在しているビジネスプロセスは、ルーチン的で予測可能なビジネスには適しているが、発見や解釈、交渉、複雑な判断が求められる仕事には向いていない。ナレッジワークは協力的なもので、ソーシャルなのだ。規律がないこともあれば不合理なこともある。ソーシャルコンピューティングの技術や原理は、すべての企業や企業間で実行されていくだろう。これにより、企業の生産性がより向上する」と説明した。

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