「欧米では一般的なSLAという考え方が日本では希薄」――。この4月に独立行政法人情報処理推進機構(IPA)の理事長に就任した、元NEC社長の西垣浩司氏は、日本国内における情報システムのプロジェクトの進め方にこう問題点を指摘している。
2003年4月に独立行政法人になったIPAは、この4月から第2期中期計画を展開。同計画では、(1)ITの安全性向上に向けた情報セキュリティの強化、(2)情報システムの信頼性向上に向けたソフトウェアエンジニアリングの推進、(3)IT人材育成の戦略的推進、(4)開放的な技術・技術標準の普及――という4つを重点施策として進めている。
このうちの(2)に関連して、IPAでは「ソフトウェア・エンジニアリング・センター」(SEC、鶴保征城所長)という専門組織を2004年10月に立ち上げ、企業向け情報システムソフトと組み込みソフトの開発力強化を目指している。「日本のソフトウェア技術の中心的存在」(西垣氏)というSECは現在、「見える化をはじめとするエンジニアリング手法によるITシステムの信頼性確保」(第2期中期計画)を目的に、重要インフラ分野における品質・信頼性を確保するため、「失敗事例も含めたさまざまなプロジェクトの実践的なデータを産業界の協力を得て収集、分析している」(西垣氏)。
そうしたSECの活動と自身の過去の経験を踏まえて西垣氏は、冒頭のようにSLA(サービス水準合意)の違いを触れている。
「欧米では、(情報システム構築の)プロジェクトを進めるにあたり、どれくらいお金をかければどのくらいの信頼性をキープできるのか、相関を決めている。欧米ではそうしたSLAが常識となっている」(西垣氏)
逆にSLAが希薄な日本では、「(情報システムは)絶対に壊れてはいけないという考え方が極端に強いが、そこからは何も進歩が生まれない」(西垣氏)と、日本国内での情報システムを取り巻く環境に潜む問題点を指摘している。