IT企業が自動車メーカーを買える時代
厳しい経済状況のなか、ビジネスアプリケーションを鍵に企業とITの関わり方を多角的に考察、論議する「ZDNet Japan ビジネス・アプリケーション カンファレンス」が6月10日、シーネットネットワークスジャパンの主催で開催された。
基調講演には、調査会社Forrester Researchのバイスプレジデント兼プリンシパル・アナリスト、Ray Wang氏が「不況に打ち勝つアプリケーション戦略を構築するための秘訣」と題して登壇した。
Wang氏は冒頭、「我々の前には、これまで見たこともないような大きな変化が起ころうとしている。何かが生まれ、消え去る。そのサイクルもたいへん早くなっている。ビジネスはこのような動きに対し、できるだけ迅速に反応しなければならない。10年前にIT企業が自動車メーカーを買収するなどという話を思いつく人がいただろうか?しかし、いまや、Googleの時価総額は1690億ドル。General Motors(GM)のそれは35億ドルであり、GoogleはGMを簡単に買えるのだ」と述べた。
ベンダーロックインから脱却するためには
この10〜15年くらいはビジネスアプリケーションのなかでも、ERPが有効だという声が多く聞かれた。利点としては、開発コストが下がり、ベストプラクティスや標準技術をビジネスに活用することができるようになったことだ。しかし、一方で欠点もあった。
「ERPなどで特定のベンダーにロックインされている状況がある」(Wang氏)。また、「IT予算のうち67%がシステムの維持・保守のために使われている。技術革新、改善のためには3分の1しか割かれていない」(同)のが実態だ。
このような状況から脱却するには、どうすればよいのか?
Wang氏は「まず、ビジネスとITをうまくつなげること」が重要だと語り、ビジネスでのITの役割と効用を4つに分類する。
業務におけるITの効用
1つ目は法令順守だ。法令順守には企業機密から個人情報にいたるまで、情報が漏えいすることがないよう、セキュリティを確保することが要件となる。次に効率性の向上が挙げられる。運用をより円滑にして無駄を省き、コストを削減するためだ。3つ目は戦略的なITの活用だ。顧客からの信頼性を向上させ、価値をもたらす。最後には、やはり成長を勝ち取ることであり、競争優位の状況を作り出すことが課題になる。
ビジネスとITを連携させるには「ビジネスプロセスの中にチャンスがあり、ここを変革する」(同)ことが重要になる。そのビジネスプロセスには、
- 従業員全員が共有できるもの
- 企業の基幹部を支える、不可欠で、外部の手には渡せないもの
- 他社にはできない独自の革新的なもの
この3つがあるとWang氏は語る。
業務を共有化できる部分を特定できれば、そこはシェアードサービスなどに任せ、アプリケーションをはじめとするIT資産の統合、集約を進めれば「コストは削減できる。その節約できた分を、企業の核となる部分、独自の技術などに振り向ける」(同)ことができるという。
このような方向に進むにはどうすべきか。Wang氏は次のように解説する。