2008年後半から重篤化したサブプライム問題やリーマン・ブラザースの経営破綻以降、金融危機は世界的な実体経済の悪化へと波及した。
日本の2009年1~3月期における国内総生産(GDP)の実質成長率はマイナス15.2%(年率換算)を記録し、不況の底打ちが見えない中、企業はIT投資の予測を軒並み下方修正している。
だが、今こそ企業が着手すべきは、経営体質強化へ迅速に対応するための戦略的IT投資とITポートフォリオの本格見直し、そして新たなビジネスプロセスへの転換である。
これまで日本企業は、長期的視野で業務を改善し、個々人の業務遂行レベルを高め、その結果として高い生産性や品質を実現させ競争力に結びつけてきた。その長年培われてきた業務に対する知見やノウハウ(暗黙知)を体系化し、それらを高いレベルで共有させ、改善サイクルを迅速に回していく体質に変えることが、不確実な経済を生き抜く鍵となるだろう。
SOAプラットフォーム「Cosminexus(コズミネクサス)」のフロント統合基盤
日立製作所は、SOAによるシステムを構築、運用するためのミドルウェア製品群「Cosminexus」のフロント統合基盤(ビジネスユーザーが活用するツール群)に、ベテランの作業手順や知識、ノウハウとシステムの融合を実現する業務ポータル「uCosminexus Navigation Platform」(以下、業務ポータル)を投入。2009年2月から提供を開始した。
Cosminexusファミリーへ新たに加えられたこの業務ポータルは、業務フローとガイドを同一のウェブ画面上に表示するユニークな手法を用い、個人が蓄積している知識とノウハウを組織内で共有できるシステムとして、多くの業界から注目を集めている。
そこで今回は、日立製作所 ソフトウェア事業部第1AP基盤ソフト設計部の主任技師を務め、この業務ポータルの開発を主導した的池陽氏に、ZDNet Japan編集長の冨田秀継が話を聞いた。
業務フローとガイドでベテランの知識とノウハウを組織内で共有
冨田:業務ポータルの正式リリースは今年の2月ですが、コンセプトが発表された時点で各方面からの評価も高かったようですね。
的池:おかげさまで、2008年10月に出展したイベント「ITpro EXPO」において、業務ポータルが「ITpro EXPO AWARD 2008 Autumn(エンタープライズ部門)」を受賞したことで早くも注目が集まりました。
業務フローとガイドで業務を高いレベルでナビゲーションするという独創性が評価されたのではないかと自負しています。
個人レベルでの作業手順を画面上に業務フローで体系化すると同時に、各プロセスに密接なバックエンドの既存システムと連携させることで、必要な情報やノウハウをガイド画面で提供し、ベテラン同様に業務遂行をスムーズにナビゲートできるように工夫しています。
冨田:SOAプラットフォーム構築基盤であるCosminexusのフロント統合基盤として位置づけられる業務ポータルですが、その開発の狙いとは何だったのでしょうか。