ノークリサーチは8月25日、国内クラウド関連市場規模に関する調査結果を発表した。それによると、同市場は2012年に2065億円の規模に達する見込みという。
ノークリサーチでは、「クラウドコンピューティング(クラウド)」の定義を、インターネット経由のサービスとして、ハードウェア、ネットワーク、ミドルウェア、アプリケーションといったITリソースを提供するビジネス形態である「XaaS」に「仮想化/抽象化によるシステム構築/運用における柔軟性と迅速性」と「ITリソースの規模を拡大/共有することによるスケールメリット/効率改善/可用性向上」という2つの要素を加えた情報処理ステムの構築/運用形態であると定義している。
今回の試算においては、クラウドをXaaSの一部とみなし、クラウド関連市場規模の試算においては、まずXaaSの市場規模をIaaS(ハードウェア)、PaaS(開発プラットフォーム)、SaaS(アプリケーション)に分けて算出。次に、そのそれぞれについて、クラウドへ移行する割合を試算し、それを合算することで中堅中小企業を含むクラウド関連市場全体の市場規模を試算したという。
また、クラウドについては、「パブリッククラウド」と「プライベートクラウド」に分類。パブリッククラウドは「不特定多数の顧客に対してクラウドコンピューティングをサービスとして提供するビジネス形態、もしくはその目的のために構築/運用される情報システム」、プライベートクラウドは「クラウドコンピューティングの技術を活用しつつ、ITリソースを自社の管理下に置くことによって、サービスレベルの決定などのガバナンスを自社で保持したまま、クラウドのメリットを享受する情報処理システムの構築/運用形態、もしくはその情報処理システムそのもの」と、それぞれに定義している。
プライベートクラウドについては、企業ユーザーが仮想化を活用したサーバ統合を実践した結果として到達するケースも考えられるが、今回の市場規模試算においては、XaaSからクラウドへと検討を進める段階で、自社のITガバナンスを維持するためにプライベートクラウドという選択肢をとるケースのみを試算の対象としたという。
この試算によると、2009年に249億円規模とされる同市場は、2010年に520億円、2011年に956億円と成長を続け、2012年には2065億円規模に達すると予想されている。また、今後のクラウド関連市場では、ユーザーがシステム開発をせずにアプリケーションを利用するSaaS形態が金額面で多くを占めると予想しており、PaaSやIaaSについては、当面大企業におけるプライベートクラウドでの採用が大半で、中堅・中小企業への普及は、2012年以降になるとしている。
ノークリサーチでは、企業におけるクラウドの活用に当たっては「ユーザー側の正しい判断や相応の努力が必要」としており、特定の情報処理システムの構築運用においてパブリッククラウドを活用すべきかについては「自社のコア業務の性格、および検討対象のシステムとの結びつき」(季節変動の激しい業務かどうかなど)や、「検討対象システムのライフサイクル」(既に枯れたシステム化それともまだ改善が続くか)、「検討対象システムに求められるスケールや負荷状況」などの点を綿密に検討する必要があるとしている。また、プライベートクラウドの活用においては部署や拠点を含めた業務プロセスの現状を把握した上で、全体最適のための強力なガバナンスを発揮することが求められるとする。
「クラウドが提供するのはあくまでもITリソースであり、情報システムの構築・運用における要件定義やシステム設計を不要にするものではない。むしろ、こうした上流工程ではこれまで以上に綿密な検討や検証が求められる」(同社)とし、迅速性や俊敏性といったクラウドの長所だけに目を奪われ、こうした検討をないがしろにすることがないようアドバイスしている。