サイボウズは8月8日、事業戦略についての説明会を開催した。同日に創業10周年を迎えたサイボウズは、新たな事業戦略として「製品の2大ブランド化」と「リレーション・マーケティング」を展開するという。
サイボウズ、代表取締役社長の青野慶久氏は、1997年に3名の社員でスタートした創業当時を振り返りつつ、改めて「情報サービスの大衆化」というサイボウズグループの企業理念を強調した。
創業当初は、ウェブサイトからのダウンロードによる直販100%でスタートしたが、現在では主力となるグループウェア「サイボウズOffice」および「サイボウズガルーン」を合わせて、販売パートナー経由の間接販売による売上が69%を超える。また、2000年には東証マザーズに上場、2002年には東証2部、2006年には東証1部と市場を変更しながら企業規模を拡大し、現在では、12社の関連会社を持ち、連結で従業員数が700名を超えるグループへと成長している。
青野氏は、2006年におけるグループウェア市場のシェアに関するリサーチ結果(ノークリサーチによる)を引用し、「Office」「ガルーン」を合わせたサイボウズ製品のシェアが、IBM Lotus Notesに次ぐ第2位(24.6%)にまで伸長したことを報告。2万5000社、250万人超のユーザーに対して謝意を述べると共に、「これからも長期にわたってサイボウズ製品を継続して使っていただけることを目指し、新たな事業戦略は、特に既存顧客との関係強化を意図したものである」とした。
「かんたん」と「ガルーン」の2ブランドを展開
具体的な事業戦略として挙げられたのは「製品の2大ブランド化」と「リレーションマーケティング」である。
2大ブランド化は、現在、製品の本数が増え、個々の製品の特性が理解しづらくなっているとの声に応えたもので、これにより同社の製品ラインは「サイボウズかんたんシリーズ」と「サイボウズガルーンシリーズ」に大別される。中小企業向けの「かんたんシリーズ」には、グループウェアの「サイボウズOffice」、ウェブデータベース「デヂエ」、グループメールシステム「メールワイズ」、国際化対応グループウェア「Share360」などが含まれる。一方の「ガルーンシリーズ」は、中堅大規模企業向けの製品ファミリーとなり、グループウェア「ガルーン」、「ブログ」、SFAシステムの「ドットセールス」、「ワークフロー」などがラインアップされる。
リレーションマーケティングの強化は、既存顧客の長期的な確保を目指したもので、ユーザーに対する電話サポートによる利用促進、ユーザーコミュニティの開設、ユーザーイベントの開催等が企画されているという。また、既存顧客に対して「かんたんシリーズ」の製品を抽選により88本限定で1本8080円で販売するというキャンペーンも行う。これらの施策により、既存顧客との関係強化を図っていきたいとする。
ラボでの新たな取り組み「Pathtraq」
8日の戦略発表には、関連会社の代表も顔をそろえ、その中で、サイボウズ・ラボが提供する新たなサービス「Pathtraq」(http://pathtraq.com/)が発表された。
Pathtraqは、ユーザーが同サービスのサイトからダウンロードできるInternet ExplorerおよびMozilla FireFox向けのプラグインを利用して、ユーザーのウェブページに対するアクセス履歴を収集。結果のサマリを統計情報としてPathtraqサイト上で閲覧できるというもの。
ウェブページに対する評価システムとしては、リンク解析やソーシャルブックマークといった試みが既に行われているが、これらの仕組みでは、積極的にリンクやブックマークなどを行わない「サイレントマジョリティ」と呼ばれる層の動向が反映されにくいといった側面もあった。
Pathtraqでは、ページへのアクセスという能動的なユーザーの行動を自動的に収集することで、ソーシャルブックマークなどから得られるものとは性質を異にする指標の確立を目指す。
プライバシー面についても考慮されている。Pathtraqでは、収集したアクセスの統計情報のみを保存し、ユーザーの行動追跡などは行わない。また、アクセス元のIPアドレスはスパマー対策のためにハッシュ化されたURLとともに、メモリ上に1時間蓄積され、その後自動的に消去される。さらに、ユーザーはPathtraqによるログ収集機能を、自らの意思で一時的に停止することも可能だ。
サイボウズ・ラボでは、今後1カ月で1万人のインストールを目標としている。研究段階のため、ビジネス化などについての詳細は未定だ。