Oracleの最高経営責任者(CEO)であるLarry Ellison氏は米国時間3月20日、OracleのLinux事業で初めてとなる大口顧客としてYahooと契約を交わしたことを発表した。しかし、YahooからすべてのRed Hat製品を置き換えるまではいかなかったようだ。
Ellison氏は、2006年10月以来、Linuxで先行するRed Hatに対して真っ向勝負に挑んでいるOracleがその進展を示す最初の確かな証拠としてYahooとの契約に至ったことを挙げた。Oracleは、「Red Hat Enterprise Linux」(RHEL)を自社で独自に手を加え、Red Hatより低料金でサポートを提供している。
Ellison氏は、同社の四半期決算報告を発表した後に開いた電話会議で、「われわれはすでに多数のサポート契約を結んでおり、なかには50万ドルを超えるものもある。また、OracleはYahooをはじめ、多数の顧客サイトでRed Hatに代わってLinuxのサポートを提供することになった」と述べた(Thomson Financialの記録によると、Ellison氏はもっと大胆な言葉を用いて、OracleはYahooにおいてRed Hatを「完全に置き換えた」と述べたという)。
Red HatとYahooの両社によると、Red Hatが完全に取って代わられた事実はないという。
Yahooのエンジニアリング担当バイスプレジデントであるLaurie Mann氏は声明で、「われわれの既存のインフラはRed HatとOracleの両方のLinux製品を利用している」と述べている。また、Red Hatの広報担当であるLeigh Day氏も、「Red HatとYahooの間には、これからも有益な関係が続いていく」と加えている。
Oracleにコメントを求めたが回答を得ることはできなかった。
業務運営に膨大な数のサーバを運用しているというYahooにコンピューティング技術企業が売り込みをかけるのは当然である。また、Yahooがどの程度の範囲までOracleのLinuxを利用するのか明らかではないが、Oracleが重要な節目となる大口の顧客を確保したことは注目に値する。
Ellison氏は、「一朝一夕にはいかないが、Linuxビジネスを築き上げていく。われわれのLinuxサポート業務はまだ始まったばかりだが、堅実なスタートを切ることができた。われわれのLinuxサポートサービスは、無事に立ち上がり、首尾良く運営されている。『Oracle Enterprise Linux』の販売には、Dell、Hewlett-Packard(HP)、およびコンピュータ製品販売代理店(CDW)が協力している」と語っている。
Red Hatは2006年12月、直近の四半期はOracle Linuxの動きに一切影響を受けなかった、としていた。Red HatのCEOであるMatthew Szulik氏は、価格引き下げの意向がないことを明らかにしている。
OracleはRed Hatと強力な提携関係にあり、同Linuxベンダーには1999年から大規模な投資を行うとともに、OSを大々的に売り込んできた。しかし、Linuxの成長にともない、両社は徐々に意見の食い違いを見せていた。
Red Hatは、2006年にオープンソースのJavaサーバソフトウェアの開発企業であるJBossを買収した。JBossはこの分野でOracleの提供するソフトウェアと直接競合していた。これを皮切りに、Oracleが「Unbreakable Linux」プログラムを立ち上げ、同社とRed Hatは直接のライバル関係になった。Oracleは、単にLinuxの1バージョンを販売するのではなく、Oracleソフトウェアやハードウェアとの互換性を確保するために、Red HatのLinuxをソースコードから手を加えている。
両社の勝負は最近も続いている。Red Hatは3月に、「Red Hat Exchange」というオープンソースソフトウェアの販売サービスを発表した。このサービスでは、複数のオープンソースベンダーの製品を販売し、そのベンダーの中にはOracleの競合も含まれている。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ