オージス総研は、大阪ガスのIT部門が独立した形で1983年に設立された企業だ。その経緯から、現在でも大阪ガスグループのシステム運用および管理を担当しているが、収益の約60%は大阪ガスグループ外からとなっており、データセンターサービスの「iNETVASS(iネッとばす)」など外部向けのサービスも積極的に展開している。通常のデータセンターは電力会社からの電力発電を利用しているが、同社はガスインフラ事業を展開する大阪ガスのグループ企業とあって、メインの発電にガスエンジンを利用、非常用に商用の電力とバッテリーを用意するという三重構造を採用しているのが特徴だ。
大阪ガスは、ガス事業においては関西では独占企業だが、エネルギー供給という観点から見ると電力会社などの競合も存在する。そのため、「競合優位性を身につけるためにも、コストを下げ生産性を向上させなくてはならない。そのためにPC周辺の運用効率を上げることは必須だ」と、オージス総研 運用サービス本部 システム運用部 部長の米田和久氏は語る。
システム運用の見直しの一環としてオージス総研では、同社コールセンターにおける大阪ガスグループのシステムサポート担当部門にて、シトリックス・システムズ・ジャパンが提供する仮想デスクトップシステム「Citrix XenDesktop」を採用した。導入に至った背景はどこにあるのだろうか。
セキュリティを確保しつつ利便性も保ちたい
オージス総研では、大阪ガスグループ全600拠点における約2万人のユーザーからの問い合わせに対応している。同グループを専任で担当するコールセンター要員は約20名。問い合わせ内容は、PCの不調や、Word、Excelなどオフィス系アプリケーションおよび業務アプリケーションの使い方、パスワードの設定などさまざまだ。
コールセンターでは問い合わせに対し、ユーザーのPCの操作内容をできるだけ手元で再現して問題を的確に把握する必要がある。そのためXenDesktop導入以前は、コールセンターから大阪ガスの業務アプリケーションサーバに直接アクセスしていた。
ネットワークには複数のファイアウォールを立てて一般社員は大阪ガスのネットワークに入れないようにし、コールセンター担当者のみがアクセス可能としていたものの、「直接接続できる状態だったため、情報漏えい対策としては十分ではなかった」と、オージス総研 運用サービス本部 ビジネス開発部の谷上和幸氏は当時の課題を説明する。
そこで、利便性を損なうことなくセキュリティを向上させるために検討したのが、デスクトップ機能をサーバ上で実行するというデスクトップの仮想化だ。シンクライアントと呼ばれることもあるこのソリューションを導入するにあたって、オージス総研では3つの方法を検討した。サーバ上のアプリケーションを複数のユーザーが共有して利用する「仮想サーバベース方式」、サーバ上にユーザーごとのゲストOSを作成して利用する「仮想PC方式」、そして1ユーザーが1枚のブレードPCを専有して利用する「ブレードPC方式」だ。