VPNとは、Virtual Private Networkの頭文字であり、仮想閉域網や仮想プライベートネットワークなどと訳される。VPNは、広域ネットワークであるWAN(Wide Area Network)構築のために利用される。それでは、実際にはVPNとはどのようなものなのだろうか。
専用線と同等の安全性を実現
売上、給与、人事、新製品、セールスキャンペーンなど、企業内のネットワーク上では、さまざまな情報がやり取りされている。そして、これらの情報の中には、遠隔地にある支店や営業所からも、リアルタイムに近いタイミングでアクセスしたいものが含まれている。
このようなニーズに応えるために企業は、遠隔地の支店や営業所を社内のネットワークに取り込むためのWANを構築している。従来、WANの構築には専用線が使われてきた。WAN構築に利用される専用線は、契約回線の帯域全体を占有できたり、データの漏えいなどの危険性が少ないなどのメリットはあるが、使用距離や回線速度によって利用料金が上がったり、複数拠点と接続したときのコスト増が大きかったりというデメリットもあった。
そこで注目されるようになったのがVPNだ。VPNは、専用線の代わりにインターネット環境を使ってWANを実現するものだ。簡単に言えば、VPNはトンネリングによってデータを受け渡すことでセキュリティを確保する仕組みだ。
トンネリングでは、送出側のVPN機器でデータに新たなヘッダが付加されてカプセル化される。そして、その内容がインターネットを経由して受取側のVPN機器に渡され、付加されたヘッダが削除される。つまり、VPN機器の両端では、専用線などによって直に接続しているときとまったく同じ動作となり、VPNの存在を意識する必要がないのが特長だ。
このようなトンネリングの動作では、送出側と受取側のVPN機器が互いに相手を認証する必要がある。ただし、インターネットで利用されるIPプロトコルには通信相手を認証する機能がない。このため、トンネリングでは、PPP(Point to Point Protocol)などの認証機能を有するプロトコルによって、送出するデータとIPヘッダがくるまれる。
VPNにおけるカプセル化の例。
そして、このPPPヘッダ、IPヘッダ、データの組にIPヘッダが付加されて、受取側のVPN機器に向けて送出されることになる。このように、ある通信プロトコルによって他の通信プロトコルをくるむことを“カプセル化”と呼んでいる。
インターネットVPNとIP-VPN
VPNは、その接続形態から「インターネットVPN」と「IP-VPN」の2つに分類できる。このうちインターネットVPNはインターネット自体を利用するVPNであり、IP-VPNは通信業者であるISPが持つネットワーク上で、インターネットとは異なるIP網を使って構築される。実際にVPNを利用するときには、インターネットVPNとIP-VPNのいずれにするかを、コスト、安全性、信頼性などの面からの検討することが必要だ。
両者の特長としては、インターネットVPNは、インターネットを利用するものであるため、ADSLやFTTHなどの安価なネットワークが選択でき、低コストでの実現が可能。ただし、インターネットを利用するため、第三者によるデータののぞき見や改ざんといった不正アクセスが何らかの方法で防がれている必要がある。また、同一ネットワーク上の他のユーザーによるインターネットの利用状況によって、通信速度が大きく低下する恐れがあること覚えておかなければならない。
これに対してIP-VPNは、ISPによるサービスであり、ISPが独自に構築するため、不正アクセスの危険性はかなり低く、安全性が確保される。また、ISPによって通信速度が保証され、導入や運用に関するサービスを受けることも可能だ。
つまり、インターネットVPNはコスト重視の用途向けであり、IP-VPNは安全性や信頼性重視の用途向けと考えることができる。
IPsecで安全を確保
インターネットVPNはコスト重視の用途向けではあるが、インターネットVPNでも安全性や信頼性は確保されている。インターネットVPNでは、データののぞき見や改ざんなどの不正アクセスを防ぐために、IPsec(IP security protocol)の認証機能や暗号化機能が利用されている。
IPsecは、IETF(The Internet Engineering Task Force)によって標準化が進められている暗号化通信の規格。インターネットVPNでは、IPsecでのAH(Authentication Header)とESP(Encapsulating Security Payload)という2つのプロトコルが使用されている。このうちAHは、通信途中でパケットが改ざんされなかったことを保証し、データの送出側と受取側を互いに認証するためのものだ。また、ESPは、パケットを暗号化するために使われる。
また、インターネットVPNには、SSL(Secure Sockets Layer)を使って安全性を確保するSSL-VPNもある。SSL-VPNによって、ダイアルアップ接続や公衆無線LANなどによるリモートアクセスで、VPN機器をクライアント側に用意しなくてもインターネット経由で拠点のLANに接続することができる。
さらに、インターネットVPNには、導入が容易であったり、オプション機能をユーザーが任意に選択できるといったメリットもある。現在では、サービスとしてインターネットVPNを提供するISPやSIベンダも増えてきているため、機器選定や管理の手間を省いてインターネットVPNを導入することもできる。
PR:コンプライアンスで求められる、安全な通信環境の重要性を解説「
関連情報
-
アルファシステムズ、VPNサーバ「alpha W-VPN 1000」を発売--パケット複製で品質が安定
通信系ソフト開発のアルファシステムズは、インターネットVPN技術とパケット複製技術を組み合わせたパケット複製機能付VPNサーバ「alpha W-VPN 1000」の販売を開始した。 - ブルーコート、オンデマンドSSL-VPN機能を搭載した新製品「BlueCoat RA」を発表
- 関電システムソリューションズ、日本通信の「Secure PBクライアント」を採用
- 日本セーフネット、レイヤ2で高速な暗号通信を実現「SafeEnterpriseEthernet Encryptor」を発表
- プラネックス、PacketiX VPN 2.0採用のASP型VPNサービスを開始--レイヤ2のVPN接続を低コストに
- F5、SSL VPNアプライアンスでベリサインのワンタイムパスワード認証を使用可能に
- ソフトイーサ、「PacketiX VPN 2.0」向けオプションパックを8月7日提供開始
- アッカ、ウィルコムと中小企業向けIP-VPNやPHSデータ回線提供で協業
- アベンテイル、SSL-VPNの新しいプラットフォームを発表--ネットワーク接続で検疫を実施
- 日立、PDA向けVPN製品の新版を提供開始--ウィルコムの「W-ZERO3」に対応へ
「通信」 の新着情報
-
複数のデータセンターを分散させたままでBCP/DRを展開:山武
業務に必要なシステムをデータセンターで稼働させている企業は多いと思うが、災害復旧(DR)を中心とした事業継続計画(BCP)... - 日立ソフト、「SecureOnline 出前クラウドサービス」発表--導入負担を軽減
- APC、アセスメントサービス拡充--赤外線カメラで高温部分を把握
- シマンテック、中小企業に関するIT調査を発表:57%がIT費用増加と回答
- 日本IBM、企業内クラウドの展開を管理するアプライアンス「CloudBurst」を発売
- 通信 一覧へ »
「公衆回線をセキュアにするVPN」 のバックナンバー
-
「FirePass」を中核にSSL VPN市場の拡大とユニバーサルアクセス実現を目指すF5
ネットワーク機器の導入や設置、システム管理者の人件費など、コスト面での課題や、ユーザーが期待するセキュリティレベルと現実のギャップなどの課題を解決するのが、F5ネットワークスが提唱する「ユニバーサルアクセス」だ。 - 公衆回線をセキュアにするVPN 一覧へ »
ZDNet Japan Essential Topic
-
バズワードの裏側みてみませんか?
SaaSにSOA、仮想化までビジネス視点からバズワードを斬ります -
セキュリティ事件簿
情報セキュリティをおろそかにすると……
企画特集
-
そのストレージで仮想化に対応できますか?
メリット盛りだくさんのサンのオープンストレージ製品 -
ストレージメディア特設サイト開設
仮想化環境において最適なソリューションを! -
パンデミック対策特集
2009年のパンデミック発生から再考する事業継続計画 -
インターネット上の悪意を未然に防ぐには?
ブラウザに備わったセキュリティ機能を徹底解説 -
【徹底対談】運用管理ツールの賢い使い方
市場背景〜仮想化管理までアナリストが解説! -
中小企業のセキュリティリスクとは?
導入する側・される側 得するセキュリティ製品 -
◆エン・ジャパン厳選求人☆毎週更新◆
不況下でも急成長の秘訣とは?注目企業の取組みも公開! -
集積度も性能も、業界最高水準のブレードPC
サーバの実装技術を、シン・クライアントへ応用 -
今注目の「サジェスト検索」−デモ掲載中
システムのユーザビリティに革命を起こす技術とは -
仮想環境を実現するソリューション特集
仮想化導入時、こんなところ気にしてますか? -
セキュリティ&ユーザ事例【SIer Club】
最新のセキュリティ情報と提案事例が満載 -
SOA、BPM、SaaS −今、企業に必要なこと
ビジネス・アプリケーションの今を網羅する特設サイト -
ESBでIT投資の無駄を劇的に解消する
IBM IMPACT 2009を徹底レポート! -
ロリポップ!がリニューアル
【第1回】創業者の家入一真氏が語る誕生秘話!! -
マネジメントの「コラム」と「コネタ」
今日のキーパーソンは誰? -
サーバー監視・運用のコストを削減するには
エージェントレス方式を用いたパトロールクラリスで -
エンタープライズにおけるSUSEの強み
次世代データセンターの基盤は11だ。 -
サービス・ドリヴン・データセンター
コスト効果の高いデータセンター構築には? -
■ストレージ容量50%削減保証■
ネットアップによる削減保証キャンペーン実施中
ZDNet Japanからのお知らせ
- ご回答にはCNET_IDご登録が必要です。
-
9. 出荷準備はOK?
この3分間のビデオは、あなたがソフトウェアを出荷する前に、データレー... -
10. Parallel Debugging Extensions
この3分間のビデオは、並列アプリケーション内のそうでなければ発見しが...
新着企業動向
-
アシスト、HP Service Manager バリュー・キット を発表
アシスト -
After J-SOX 2年目の監査は甘くない!
NTTソフトウェア -
GMO-HS「アイル」、共用サーバー「iCLUSTA」の機能を強化
〜 「設定代行」を開始 や ディス...
GMOホスティング&セキュリティ -
SecureCube / PC Check
NRIセキュアテクノロジーズ - 企業動向一覧へ»
サーバやOS、アプリケーションなどの世界ではオープンソーススタンダードが市場を牽引する現在、ストレージの世界でもオープン化の流れが始まっている。
幸い今回は弱毒性で大事には至らなかったが、まだ油断はできない。企業活動を停止すると、大きな経済的損害や社会的信用の低下を招いてしまう。 
