ここ1、2年における、Oracleのビジネスインテリジェンス(BI)、エンタープライズパフォーマンスマネジメント(EPM)分野における動きの早さは、他の総合系ベンダーと比べても特筆に値すると言えるだろう。
従来も、Oracle独自のBIへの取り組みとして「Discoverer」と呼ばれる製品を提供していたが、2006年に買収したSiebel Systemsの「Siebel Business Analytics」は、Fusion Middleware製品ファミリーのひとつである「Oracle Business Intelligence Suite Enterprise Edition」(Oracle BI Suite EE)としてすぐさま統合。2007年4月には、最新バージョンとなる「Oracle BI Suite EE 10g Release 3」の出荷を開始した。
その直後の5月には、従来のSiebel製品の業務指標分析の資産とノウハウを生かした業種別テンプレート集「Oracle Business Intelligence Applications」の提供を開始。
さらに、8月には大企業内のワークグループ、および中堅・中小企業向けの製品となる「Oracle Business Intelligence Standard Edition One」(Oracle BI SE One)を、立て続けにリリース。Siebelの持っていたBI分野に関する資産を、迅速にOracleのプラットフォームに統合し、一貫性を持ったソリューションとして、ユーザーに提供する環境を整えてきた。
これと並行して、2007年3月には、EPMベンダーであったHyperion Solutionsを買収。予算管理、プランニングのためのコンポーネントを手に入れた。これによって、Oracleは全社規模でのEPMから、現場レベルでのBI活用まで、幅広いユーザーニーズに応えるためのポートフォリオを取りそろえることに成功した。
こうした、BI、EPM分野における製品ポートフォリオの急速な拡充を進めた背景について、日本オラクル、システム製品統括本部営業推進本部Grid Computing推進部部長の岩本浩央氏は、ERPのような基幹系システムの需要に対する一巡感と、それによる新たなユーザーニーズの発生があると説明する。
「ERPの整備などを含む、企業の情報システム投資は一巡した感がある。その先にあるのは、経営のスピードアップや、情報の“見える化”といった要求。ITの分野では、BIがそうした要求に対するサポートを行うことを期待されている。大企業になればなるほど、その中にはさまざまな業務パッケージが入ってきており、それらすべてを横断的に見るための仕組みが望まれているが、これまで積極的にパッケージの導入に取り組んできた企業こそ、そうしたことが難しい状況にある。しかし、複数のシステムに眠る顧客のデータから、ある特定の顧客の姿を正確に可視化できなければ、企業としては次のアクションが起こせない状況になってきている」(岩本氏)
さらに、これまで、経営企画室や経営担当者のような一部のスタッフのみが使うツールという印象もあった「BI」に対し、より現場に近いスタッフ個人もデータを有効に活用できる環境を作っていこうという流れもある。岩本氏はこれを、「“見える化”に加えて“見せる化”」のニーズが生まれていると表現した。リアルタイム性への要求がますます高まっているビジネスの現場において、現場における瞬時の判断を、より正しくサポートするためのシステムが求められているというわけだ。
「これまで、BIのシステムと業務システムの間には、それなりの“距離”が認識されていた。しかし、この2つはSOAをベースに結びつきを強めており、両システム間でのデータのやり取りをオートメーションで行えるような時代も見えてきている。BIと業務システムの一体化は、今後ますます進んでいくだろう。オラクルも、その流れを視野に入れている」(岩本氏)