大不況時代にERPから暁光は見出せるか
未曾有の信用不安による世界的な金融危機は、実体経済を巻き込みつつある。企業が経営の危機に直面するたびに、ERP(Enterprise Resource Planning)は経営の救命胴衣として期待されてきた。
将来の見通しが厳しい時代に、取るべき対策がERPから見えるのか。生き残りをかけ、ERPに多額のIT投資をした企業は、それに見合った価値をどうすれば生み出せるのだろうか。本連載では、ERPについて再考していきたい。
まず、ERPとは何なのか改めて振り返ってみよう。1990年代半ば、国内においてはERPはしばしば、BPR(Business Process Re-engineering)とセットでその価値を語られることが多かった。当時、Michael HammerとJames Champyが提唱したBPRが経営再建のキーワードとなり、ERPがBPRを実践するための手段の1つとして注目された。
だが冷静に考えれば、BPRとERPは改革のアプローチが異なっていることに気づく。BPRは、経営体質を大改造するために、現在のビジネスプロセスを抜本的にデザインし直すアプローチであるはずだ。これは過去の業務構造を捨て、一から再構築することを意味する。
一方、ERPは先進的企業から学んだベストプラクティスを、現在の業務に適用することを前提として生まれている。ERPを導入する際に、しばしばどのベストプラクティスを自社に取り入れるべきか判断するためのフィット&ギャップ調査を行うが、この時点ですでにBPRからは離れ、過去のビジネスプロセスを改善あるいは修正する方向性が強くなっている。
実際のところ、90年代にいち早くERPを導入した企業の多くは、メインフレームからオープンシステムへの移行と同時に、グローバルスタンダードを自社のビジネスプロセスに取り入れることが大きな狙いだった。グローバルスタンダード、後のベストプラクティスである。
パッケージ化されたERPシステムの導入によって、業務システムを統合するという作業における手間とコストを大幅に省くことができたが、それだけでは業績の回復や収益の拡大にはつながらなかった。ビジネスプロセスを取り入れただけなのだから、「競争力」を生まないのは当然だった。データから判断を下すのは、コンピュータではなく、いつも人間である。
ERPシステムの可能性と限界
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