Oracle OpenWorld Tokyo 2009、初日(22日)午前中のゲストとして基調講演を行ったのは、日本ヒューレット・パッカード(日本HP)、代表取締役社長執行役員の小出伸一氏だ。
OracleとHPといえば、昨年9月にOracle OpenWorld San Franciscoで発表されたデータウェアハウスアプライアンス「Exadata Storage Server」での協業を始め、強力なパートナーシップを築いている関係にある。
小出氏は冒頭、「Oracleからは、先日大きな発表があったばかりですが……」と、20日に発表されたばかりのSun買収のニュースに言及。「あるお客様からは、“本当にOpenWorldで基調講演をやるのか?”と聞かれたりもしたが、実際にOracleとは大変良い関係でビジネスをさせていただいている」とジョークを飛ばし、会場を沸かせた。また、実際のプレゼンテーションの中でも、OracleとHP製品の組み合わせによる現在のシェアが、Oracle Databeseにおいては41%、Oracle Applicationsにおいては46%にのぼっていることを示し、両社の強固かつ良好な関係をアピールした。
講演は「ビジネスとテクノロジーの変革 〜逆境を飛躍へ変えるHPのイノベーション〜」と題されたものだ。小出氏は、「かつてない不況からは、かつてない革新が生まれる。かつてない革新からは、かつてない飛躍が生まれる」という、故松下幸之助氏の言葉を引用。多数のITベンダーを買収合併しながら、グローバルな総合ソリューションベンダーとして成長を続けているHPが、2005年当時に陥っていた苦境から脱するために、全社で取り組んだ課題を示すことで、今日の厳しい経済状況を乗り切るためのヒントとするという内容だ。
「変革の始まり」とされる2005年。HPでは、財務面でもビジネス面でも数々の課題を抱えていたという。
財務面では、株価が10ドル前後で低迷、コストの肥大化、営業利益率はマイナス2%という状況。ビジネス面でも、ビジネスポートフォリオの偏重、マーケットニーズからの背離による訴求力の低下、企業規模拡大などに端を発するビジネスオペレーションの複雑化といった問題を抱えていた。
これらの課題を打開するするために、同社が行った変革が「プロセス・イノベーションの追求」と「テクノロジ・イノベーションへの戦略的投資」であったという。
グローバルでの戦略として「世界をリードするIT企業になる」という全社目標を掲げ、合わせて、戦略投資のための原資を捻出するための徹底したプロセス効率化とITシステムのスリム化へと取り組んだ。
特にITシステムに関する課題としては、売上の約4%をしめるほどに肥大化していたというITコスト、中でも、そのコストの6割以上を占めたという運用維持コストだったという。こうしたコスト増を招いていた元凶は、会社に管理されていないPCなどの、いわゆる“シャドーIT”と、その中で動いているものを含む6000を越えるアプリケーションだった。
さらに、世界85カ所に散在していたデータセンターが管理コストを押し上げ、750を超えるデータマートが乱立することで意思決定のための情報精度が低下するといった問題も起きていた。
この状況の中で、当時のCIOに与えられたミッションは、「精度の高い経営情報の提供」「ITコストの半減」「プロセスのコントロールによるリスクの低減」であり、ITソリューションベンダーとして、自らエンタープライズ顧客のショウケースとなるような模範的な企業システムを構築することであった。