この連載「日本独特の企業文化『帳票』を理解する」では、帳票の基礎、紙帳票のデメリットと電子化の意味を解説してきた。さて今回は現場からの抵抗を考えてみたい。
帳票が電子化されてワークフローが入れば、それですいすい仕事が進むようになるかというと、残念ながらそうではないからだ。そこには“人間系”の問題が待っている。そう、現場は変わることに抵抗がある。構える気持ちをどうときほぐしながら、仕組みとして定着させていくか。知恵を絞ろう。
体制整備だけでは不十分、“人間系”の問題に取り組むべし
電子帳票とワークフローで、新しい業務処理体制が整うのは確かなのだが、それだけで驚くほど仕事の流れが速くなるわけではない。そこには取り組むべき“人間系”の問題があるのだ。新社会人の皆さん、覚えておいてほしい。すべての仕事において、人間系をおざなりにしてはいけない。ルールを作っても、仕組みができても、人間の感情はそれとは別の流れで動いている。ひとたび反感が生まれたら、動くものも動かない。
ここでいう人間系の問題とは、帳票を日々利用する現場では、仕事のやり方が変わることに対する抵抗である。電子帳票化によって現場入力が増えることが多いため、作業負担が増えるケースもある。電子化された帳票でうまく仕事を回していくのに何より肝心なのは、現場の理解を得ることである。
変わることへの抵抗をどうやわらげるか
では、具体的にどう進めるか?現場には大きく三つの抵抗がある。一つめは帳票が変わることへの抵抗、二つめはワークフローが変わることへの抵抗、三つめは仕事が増えることへの抵抗。電子帳票化を推進する部門はこの点を十分考慮する必要がある。
まず帳票が変わることへの抵抗だが、これを低減するには、帳票のスタイルをなるべく変えないというのが一番現実的だ。記入する媒体が紙から電子ファイルに変わっただけという形で実現できれば、現場に混乱も起こらないし、帳票利用にまつわる教育もいらない。実際、帳票をコンピュータ上で設計できる製品を提供するベンダーの多くは、この点を重視している。紙の帳票をスキャナーで読みこんでそれを設計の下敷きにできたり、紙の帳票と寸分たがわぬ精度で電子帳票を設計できたり。また、従来の帳票フォームがExcelやWord、PDFベースで作られているなら、これをそのまま展開するのでもいい。
しかしその一方で、紙の帳票が部分的に陳腐化していて、電子帳票化の機会だからこそ変えたいというときもある。そういうときは帳票入力の操作性に十分留意して設計してほしい。過去データを再利用できるようにした、最小限のPC操作で入力が完了する、などといったことが訴求できたら、現場も耳を傾けてくれるだろう。
次に、ワークフローが変わることへの抵抗だが、これを下げる良策は、徹底的にシステムでワークフローを制御して起案者にそれを意識させないことだ。自分が帳票を作成して送信ボタンを押せば、システムが帳票の種類を判断して提出すべき上司へ飛ぶ。そうなれば、現場は“楽になる”と感じることができる。
そう簡単には……という声が聞こえてくる。確かに、企業のワークフローはなかなか複雑だ。