ソーシャルメディア利用に関わる脅迫観念
ソーシャルメディアへの関心は留まるところを知らない。古くはブログから始まり、SNSやYouTubeの隆盛を経て、Twitterへ。インターネットの領域では、コンシューマーマーケットで生まれたものは、エンタープライズマーケットへ取り込まれる。故に、企業はソーシャルメディアを使いこなさなければならない、という脅迫観念に囚われる。追い討ちを掛けるように、企業がソーシャルメディアを活用した成功事例が喧伝される。
以前、このコラムでも紹介したバーガーキングの「Whopper Sacrifice」キャンペーンもその一つである。そこに見いだされる潜在的な機会に導かれ、多くの企業がソーシャルメディアの活用を宣言し、Twitterでメッセージを発信し、動画をYouTubeへ載せてみる。一方、何もしなければコンシューマーマーケットから取り残される恐怖に囚われ、扱いを間違えれば逆にバッシングの対象となってしまう。
インチキコンサルタント登場
BusinessWeek誌によると、米国ではこうした状況下、有象無象のソーシャルメディアコンサルタントが百出し、市場を混乱させているという。多くのコンサルタントが成功事例を語るものの、その根拠の多くがTwitterのフォロワー数、ブログからの参照数、YouTubeのヒット件数などであり、結果的に投資対効果でどうだったのかを示していないと言う。
この記事は「Beware Social Media Snake Oil」と題されているが、“Snake Oil”とはインチキセールスマンのことである。つまり、ソーシャルメディアのインチキセールスマンに気をつけろということだ。記事の中でSaatchi & Saatchiのデジタルメディアディレクターのコメントとして、
"Anyone who says 'This is going to work' is either lying or deranged," he says.
と言わしめている。つまり、ソーシャルメディアに関して「こうすればうまくいく」なんていうのは嘘っぱちだと。また、そのディレクターは、ソーシャルメディアの活用が成功するか否かは、ベンチャー投資に似ているともコメントしている。つまり、たまに大きな成功があるが、他はほとんど失敗するということだ。
Enterprise 2.0はどこいった?
BusinessWeekの記事は、Enterprise 2.0の動静にも触れている。ソーシャルメディアテクノロジーを社内へ適用して社員のナレッジを極大化しようという試みのことだ。大手のソフトウェアベンダーがEnterprise 2.0を実現するためのコラボレイティブツールを提供してきた。しかし、ここでもやはり物事はうまく進んではいない。
記事の中ではIBM Global Business Servicesのコンサルタントが、いかに膨大な投資が効果に結びついていないかを語り、Forresterのアナリストがそれを数字で証明する。
A Forrester Research study shows that despite buzz around Enterprise 2.0, less than 15% of the knowledge workforce makes use of internal blogs, wikis, and other collaborative tools. "E-mail is still dominant," says Ted Schadler, author of the report.
Forresterのアナリストは、結局ホワイトカラーの15%程度しかブログやWikiなどのコラボレイティブツールを利用しておらず、メールがいまだ主流だとしている。