この連載では、SAN(Storage Area Network)やNAS(Network Attached Storage)などのいわゆる「ストレージネットワーク」を中心に、データセンターを構成するサーバやストレージ、さらにはネットワークの最新の市場動向や関連技術を解説する。第1回では、ストレージネットワークが誕生した背景やSANを利用することによるメリットとデメリットについて紹介する。
DASからSAN/NASへ〜ストレージネットワークの誕生と発展〜
そもそもコンピュータにとって、ディスクやテープなどの外部記憶装置(ストレージ)は“周辺機器”である。そしてコンピュータと周辺機器との間のインターフェースとして長年使用されてきた技術が、「SCSI(Small Computer Systems Interface)」である。DAS(Direct Attached Storage)とSANの違い、そしてSANが登場した背景を理解する上で、SCSI技術の変遷について知っておくことは非常に重要なので、ここで簡単に紹介しておこう。
SCSIの歴史は古く、最初のSCSI(便宜上、現在は一般に「SCSI-1」と呼ばれる)は1986年、米国規格協会(American National Standards Institute:ANSI)で規格化された。SCSIは米Shugart Technology(現在のSeagate Technology)が開発した「SASI(Shugart Associate System Interface)」をベースとしており、その歴史はさらに1970年代までさかのぼることができる。
その後、1994年にはSCSI-1をさらに高速化、汎用化した「SCSI-2」規格も登場し、コンピュータとストレージの間の接続技術としてSCSIは中心的な役割を果たすようになる。しかし1990年代以降、SCSIには以下の問題点が顕在化し始めた。
- 接続距離の限界
パラレル伝送方式で銅線を使用するSCSI-1/2では、ケーブル内の導線間の干渉の影響が大きい - 高速化が困難
上記の通りSCSI-1/2はパラレル伝送方式であるため、高速化すればするほど「スキュー」の問題が顕在化する - 拡張性が低い
1つのSCSIバスには、最大16デバイスまでしか接続できない - ストレージの共有が困難
SCSI-1/2は基本的に、SCSIバスを通じて「1台のコンピュータに1つ、もしくは複数のストレージを接続する」形態を想定している。サーバがストレージに直接接続されるため、このような接続形態をDASと呼ぶ。逆に1台のストレージを複数のコンピュータ間で共有するのには向いておらず、ストレージの利用効率が悪い