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SANとFCプロトコル
FCは、米国規格協会(American National Standard Institute:ANSI)の下部組織である「National Committee of Industrial Technology Standards(NICTS)」の中の「T11委員会」で、1988年に規格化が開始された、シリアル伝送方式の標準ネットワークアーキテクチャである。1994年に主要部分の規格化が完了したが、現在でも新しい規格が続々と策定されている。現在は、サーバとストレージの間、つまりSANのプロトコルとして一般的に使用されている。
もともとFCは、コンピュータとストレージ間の接続距離を延長する目的で策定された。ただ、当初から1秒あたりギガビットクラスの通信速度を前提としており、後述するように多くの通信プロトコルをサポートできるように作られている。FCプロトコルは、5つの階層から構成されている(図4)。
- FC-0層は物理層で、ケーブルの種類やシグナリングの標準など、物理インターフェースに関して規定している
- FC-1層では8B/10B符号化方式と「オーダードセット(Ordered Set)」と呼ばれる40ビットの構文に関する規定が存在する
- FC-2層はFCフレームの生成や、フロー制御の仕組みなどを規定している。FCでは「フレーム」がデータ転送の単位であり、可変長であるFCフレームの最大長は2148バイトである(図5)。フロー制御の仕組みとして、FCでは「クレジット」ベースのフロー制御を採用している(図6)。クレジットベースのフロー制御では、「受信バッファ」であるクレジット値をあらかじめ(ログイン時に)送信側と受信側ポート間で交換しておき、送信側ポートはクレジットが0になるまでフレームを一度に送信する。これは、受信側ポートでバッファ不足が起こらないように、送信側ポートでフレームの送信数を調整しているということを意味している。これにより、FCでは受信バッファ不足が原因でフレームが損失することを防止している。この「フレームの損失を防止できる」という点はストレージトラフィックを処理するうえで非常に重要であり、ぜひ注目していただきたい
- FC-3層は暗号化や認証など、一般サービスを規定する層である
- FC-4層は上位プロトコルとの「マッピング(対応付け)」層で、この層の存在によって、FCの上位でさまざまなプロトコルを稼動させることができる。現在最も使用されているのは、SCSI(厳密にはSCSI-3)プロトコルとのマッピングプロトコルである「FCP(Fibre Channel Protocol)」だが、IPやATM(Asynchronous Transfer Protocol)など、さまざまな上位プロトコル向けのFC-4プロトコルが規定されている