万川集海 第5回:お前のものは俺のもの--コンピュータ間のデータ共用

橋口慎一(日本IBM) 2007年02月15日 08時00分

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子供心に響いた一言

 私が子供の頃に大好きだった漫画はドラえもんだ。独自に考えたストーリーで漫画を作成し、学校のクラスの教室に貼っていたほどである。そんなドラえもんに登場するガキ大将のジャイアンが放った台詞「お前のものは俺のもの、俺のものは俺のもの」はとても有名である。

 この台詞は確かスネ夫が持っていたラジコンをジャイアンが無理やり奪い取るシーンで放ったものだと記憶しているが、最近放映されているドラえもんでは教育的な配慮のためか、このジャイアニズムが消えてしまったと聞いている。しかし、乱暴なこの発言、自分が使いたい「他人のもの」を「自分のもの」にしたいという気持ちは皆さんもお持ちではないだろうか。

ジェネレーションギャップ

 コンピュータの世界では、データ共用という仕組みがある。これを可能にする技術はかなり早い段階から開発されていたが、40才代を境にその実現方法に関する認識が大きく異なる。これはコンピュータの発展経緯とも絡んで、ある種のジェネレーションギャップを生んでいる。

 40才代半ばより年配の方は、ホストと呼ばれる大型機の構造を中心にコンピュータ教育を受けた。ホストシステムでは単一のOSでほぼ全ての業務を稼動させる形だったため、初めからたくさんの人が使うことを想定して設計されている。従って、複数台のコンピュータから同一ディスク上のデータを共用することは常識とされてきていた。

 ところが、WindowsやUNIXに代表される最近流行のコンピュータでは、1人で利用することを前提に開発され、時と共に大勢で利用できるよう発展したものである。従って、ディスクなど各コンピュータが保持している資源を、他のコンピュータが利用するとは考えていなかった。これは今でも仕組みとしては変わっていない。比較的若い世代の方々はコンピュータといえばこのようなシステムを想像されることであろう。つまりディスクを直接結線して共用することはできず「俺のものは俺のもの、お前のものはお前のもの」なのである。40才代半ばより若い方は、こちらのほうが常識だという方が多い。

皆で仲良く使える道具

 WindowsやUNIXサーバなどでも、当然ながらデータを共用したいというニーズがある。しかし、これらのサーバでは直接装置を共用することができない。そこで通信ネットワーク経由で互いを結び、他のコンピュータのディスクが自分のコンピュータにつながっているように見せる方法を選択した。

 現在のインターネットを含むネットワーク通信の基盤技術「TCP/IP」(コンピュータ間の言語のようなもの)が実装されたのは1982年だが、そのわずか2年後、折しも私が自己流ドラえもんを作成していた1984年に、このジャイアニズムを実現させた「NFS(Network File System)」という技術が開発された。しかもこのNFSという技術を使えば、ジャイアンとスネ夫の2人だけではなく、通信ネットワークを介して更に多くの仲間の間で「お前のもの」を「自分のもの」にできるのだ。つまりNFSとは、スネ夫のラジコンを、ジャイアンだけでなく、のび太やしずかちゃんも同時に「共用」できる道具なのである。私が子供の頃に数多く見ていたドラえもんにこのような道具は登場しなかったと記憶しているが、何と便利な道具だろう。

 さて、このNFSは主にUNIXと呼ばれるコンピュータ間でデータ共用するための技術だが、皆さんが日頃お使いのWindowsパソコンでも「CIFS(Common Internet File System)」という技術を利用して、同じようにデータ共用が可能だ。

 多くの人はパソコンの内蔵ディスクである「マイコンピュータ」のCドライブやDドライブにデータを保管するはずだ。ここで、もしあなたが友人のコンピュータのディスクのデータを「自分のもの」にしたければ、CIFSを利用すれば良いのである。さすがにジャイアンのように乱暴にとりあげることはできないが、友人の許可がおりれば、例えばEドライブとして別のコンピュータのディスクのデータを利用することができる。もちろん、あなたが許可すれば逆に自分のデータを友人に利用してもらうこともできる。お前のものは俺のものになり、俺のものはお前のものになるのである。

 この道具を使えば、ネットワークを通して各コンピュータのデータが共用できる。そして、会社の部門内でのファイル共用はもちろんのこと、分散された多数のコンピュータを協力させて仕事をやりとげることもでき、非常に重要な技術として幅広く利用されている。

 最近では、この仕組みを利用してデータ共用を取り行う機器の「NAS(Network Attached Storage)」も数多く製品化されている。NASはデータ共用のための専用機だ。ますます加速していくネットワーク社会において、この道具が今後も様々な形で活用されていくだろう。この道具を使えばどんなストーリーの漫画が書けるだろうか、夢が膨らむ技術である。

お前のものは俺のもの - 橋口 慎一
第5回筆者紹介お前のものは俺のもの

橋口 慎一(はしぐち しんいち)
日本IBM システム・ストレージ ATS
ITスペシャリスト
職務:ストレージネットワークソリューションの開発・サポート
一言:刻々と変化する社会の要請にスピーディーに対応できるシステム構築のためには、よりフレキシブルなデータ管理の仕組みが必要だと考えています。今回のコラムで紹介させて頂いた「コンピュータ間のデータ共用」を実現する技術は、フレキシブルなデータ管理を行う上で非常に重要であると考え、テーマとして選びました。今後、私はこれらストレージを取り巻く様々な道具を組み合わせた夢のストレージインフラの開発に貢献できればと考えています。

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