散らばるNotes・サイボウズを統合:巨大複合企業大日本印刷の新ポータル

後藤大地(オングス)

2008-02-05 10:30

”製造業”を手がける大日本印刷株式会社

 大日本印刷株式会社(DNP)は印刷技術をベースに、さまざまな”製造業務”をも手がける企業だ。

 印刷技術といっても背後にある技術はデジタル技術、雑誌や書籍といった典型的な印刷業務から、包装、内装、精密機器、情報記録など、製造技術を核として業務を展開している。それぞれの業務分野で調査・分析、企画、制作、技術開発、工程管理、データ管理などに取り組んでいる。

吉田幸司氏 吉田幸司氏

 印刷業界は変化の時代を迎えている。情報媒体はオンラインメディアへ移行しつつあり、今後どうやって事業を展開していくのか、検討すべき時にきているわけだ。DNPはこうした状況に対し、今後、「創発的」な企業に変わっていく必要があると考えるという。

 組織的にはピラミッド型の階層構造から、個々の社員がフラットなポジションから相互に関連をもって情報を流通させる構造へ変化させ、創発がスパイラル的に成長していく仕組みを確立させる。そういった創発構造から効果的、効率的な企業活動へ結びつけていこうというわけだ。

 創発的企業へと変わろうとしているDNP──その情報基盤について、大日本印刷 情報システム本部 吉田幸司氏に話を聞いた。

創発的スパイラルを実現するために、BEA ALUIを採用した新システムへ

 創発性を実現し、多様性を保持したまま企業活動を展開していくには、まずバックボーンとなる理念や文脈を効率的に共有し、徹底的に普及させていく必要があるという。核となる理念や文脈を徹底的に共有したうえで、さらに多様性を維持する。こうすることで迅速に変化する社会要求に対応しつつ、企業としての一貫性を保持できるというわけだ。

 DNPやグループ企業ではJavaで一から開発したポータルシステム「DNPweb」や、各事業部で独自開発したポータルシステムを活用していた。しかし、理念や文脈を共有したり横断的なコミュニケーションを実現するには、既存の分散したシステムでは対応できなくなっており、要求に対するシステム変更にも限界がきていたという。

自社開発した旧ポータル「DNPweb」 自社開発した旧ポータル「DNPweb」

 こうした状況を踏まえ、DNPはBEA AquaLogic User Interactionを採用し、全社統一の新ポータルシステムを開発。2006年10月に正式リリースした。

 新ポータルのキラーアプリケーションは、Webメール、eラーニング、電子会議室、スケジューラ、電子掲示板だ。これ以外にもグループウェア、電子電話帳、人事系システム、経理系システムなどのアプリケーションが統合されている。新システムに対するユーザからの反応は上々のようだ。

 DNPは、まずは認証系だけでも開発したポータルシステムに移行させ、その後、徐々に他の事業所や部署のシステムを統一していくという。2008年第2四半期ごろまでに部門ポータルを統合し、2010年第2四半期までに業務ポータルの統合を目指している。

iGoogle風のポータルシステムで社内のコミュニケーションを促進

 新しいポータルシステムには、グループ企業も含めて3万5000人分のアカウントを用意してある。アクティブに使っているのはそのうちの1万人ほどだという。

 従業員は年齢の点でも、ITスキルの点でもばらばらの状況であるため、レベル設定がかなり難しかったそうだが、中級者のなかでもちょっとスキルの高いユーザを対象にシステムを設計した。スキルの高い層をターゲットとして開発した背景には、ITを推進していこうとしている企業の内部で低いスキルに合わせるわけにはいかないという理由があったからだ。

 新しいポータルのトップページは、iGoogleのようにカスタマイズできる。ただし、経営層のメッセージや決算情報などは、最も目立つ場所で必ず表示されるように設計されている。この部分が理念や文脈を徹底的に共有させていく要となる。

経営層からのメッセージなど、全社で共有すべき理念などが最も目立つ場所に配置された新ポータル 経営層からのメッセージなど、全社で共有すべき理念などが最も目立つ場所に配置された新ポータル

 また、ポータル内のオンラインコミュニティが1000以上もあるという。業務範囲がきわめて多岐にわたるため、フォーラムの利用に対して厳しい規約は設けていない。仕事に関することだとユーザが考えるならば、フォーラムを活用して良いといったルールだけが定められている。業務用Q&Aも用意されており、最も活発なコミュニティは月に2、3万ほどのアクセスがあるという。

 ポータルシステムには社員ごとにプロフィールページが用意されており、将来的にはブログシステムやコラボレーションツールとの統合を進めていく計画になっている。拡張計画においても、BEA AquaLogic Pages、BEA AquaLogic Ensemble、BEA AquaLogic Pathwaysといったように、BEAプロダクトの採用が計画されている。

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