ゼロにはできぬ「セキュリティ投資」をどう削減する?--法人市場で躍進するトレンドマイクロの戦略

大河原克行

2009-09-14 09:30

 トレンドマイクロが打ち出す2009年度年末商戦のメッセージは「Be Absolute No.1」。2008年度にナンバーワンシェアとなった実績を背景に、2009年度は、シェアだけでなく、機能、品質などを含めて、絶対的ナンバーワンを目指すことを標ぼうする。

 積極的なテレビCMの影響もあって、トレンドマイクロのセキュリティソリューションは、「ウイルスバスター」によるコンシューマー向けのイメージが強いが、実は法人向け市場においても、着実にシェアを拡大している。

 富士キメラ総研の調べによると、個人向け市場におけるトレンドマイクロのシェアは、45.8%で首位。さらに、法人向けのゲートウェイ製品では67.5%、法人向けクライアント/サーバ製品向けでは46.5%と、いずれもトップシェアを獲得している。数値で見れば、むしろ法人市場の方が高いシェアを獲得しているのだ。

 事実、トレンドマイクロでは、CIOサミットなどでの啓発活動など、地道な企業向け施策を展開しており、こうした活動も法人向けのシェア拡大を側面から支えている。

 そして、法人向け市場における切り札となっているのが、「Smart Protection Network」の存在である。

 2005年に買収した米Kelkeaが持っていたIPフィルタリングのレピュテーションサービス技術をベースに構築したもので、「E-Mailレピュテーション」「Webレピュテーション」「ファイルレピュテーション」の3つのデータベースで構成される。これらが協調動作することで、スパムの検出や、危険サイトのブロックなどを行うというものだ。

 特に、重要な役割を果たす「ファイルレピュテーション」では、パターンファイルのうちの約75%をクラウド環境に移行して提供するため、クライアントに大きな負荷をかけずに、最新の防御パターンファイルを維持できるという特徴がある。

 2005年からの4年間で、新たに発見されたウェブからの脅威は、25倍に増加している。そのため、膨大な数の新種ウイルスの出現に対してパターンファイル作成が追いつかないといった問題や、水面化で活動する未知のウイルスには対応できない、あるいは、ユーザー企業もこれ以上の頻度でパターンファイルの更新ができないといった課題が出ている。

 こうした問題を解決するのが、Smart Protection Networkであり、それを側面から支える全世界10拠点1000人以上の専門分析エンジニアを擁するトレンドラボおよびリージョナルトレンドラボの体制ということになる。

 トレンドマイクロでは、エンタープライズを対象としたセキュリティ対策の第1歩を、「企業ネットワーク内の脅威を可視化すること」とする。

 同社では、「Threat Discovery Appliance」といった専用装置およびソフトウェアをユーザー企業に配置することで、社内のログを収集。Smart Protection Networkと照らし合わせることで、脅威に対する実態を可視化するという。この結果を見た情報システム担当者の多くが、未知の脅威となりうるものが、知らない間に、企業内ネットワーク上に蔓延していることを実感するのだという。

 もうひとつ、トレンドマイクロが訴求しているのが、同社のセキュリティソリューションを導入することで、セキュリティ強化とともにコスト削減効果があるという点だ。

 第三者機関である米Osterman Research社は、Smart Protection Networkを社員数5000人の企業に導入した場合、年間約3000万円のコストが削減できるというデータを発表している。

 IT投資抑制が叫ばれるなか、セキュリティ投資の維持は避けては通れないというのが情報システム担当者に共通した声。だが、セキュリティ投資においても、コスト削減効果がもたらされれば、企業にとってのメリットも大きいといえる。こんな提案手法もトレンドマイクロの躍進を支えているといえる。

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