「サーバなんか買うな!」
それではパブリッククラウドは企業ユーザーにどのような利点をもたらすのだろうか。1位は「自社で資産を持つ必要がない」、2位が「初期コストが低い」、3位は「サービス開始までの時間が短い」と、パブリッククラウドで一般的にメリットとされていることを意識している企業が多いことが分かる。
その一方で、パブリッククラウドの課題として意識されているものの1位が「サービスの継続性が保証されていない」ことだ。これは、提供されるサービスの可用性が不安視されていることもあるだろうが、加えて、提供事業者が経済的理由からサービスの中止があり得ることを懸念したものと分析できるだろう。
課題の2位として「既存システムを稼働させることができない」が意識されており、3位には「インターネット経由の利用だけである」がランクインしている。2位は、パブリッククラウドには技術的な懸念は感じていないものの、既存システムからの乗り換えに難を感じているようだ。3位は、これは明らかに、企業にとって重要なデータが、企業外のインターネットという公衆回線を通ることへのセキュリティ的課題と指摘できる。
昨夏の調査では、パブリッククラウドという社外サービスを利用することの不安についても聞いている。昨夏時点では「大いにある」と「ある」の合計が約71.3%と、前年よりも下がってはいるのだが、相変わらずパブリッククラウドに対する不安がかなり高いことが明らかになっている。
「個人的な意見ですが、パブリッククラウドに持たれる不安を解消してもらうためには、たとえば稼働率といった具体的な情報をベンダーが自ら情報を開示していけばいいと思っています。そうすれば、ユーザー企業から信頼を得ることもできると思います。クラウドベンダーは積極的に自らの情報を開示すべきです、『ユーザーは保守的だ』と言う前に」(舘野氏)
パブリッククラウドに対する不安を職種別に見ると経営層がほかの層に比べると不安が少ない。不安が「大いにある」と感じる経営層がゼロであるのに対して、部長クラスが17.8%、課長クラスが12.3%。係長・主任クラスにいたっては25.0%、つまり4人に1人が感じている。「ある」と合わせると、75.0%の係長・主任クラスがクラウドに不安を感じていることになる。
「クラウド化を進めている企業には、経営陣の判断によるというところもあります。経営陣から『サーバなんか買うな!』と言われている中堅企業があるとも聞きます」(舘野氏)
(後編は4月18日に掲載予定です)
Keep up with ZDNet Japan
ZDNet JapanはFacebookページ、Twitter、RSS、Newsletter(メールマガジン)でも情報を配信しています。また、現在閲覧中の記事は、画面下部の「Meebo Bar」を通じてソーシャルメディアで共有できます。