海外コメンタリー

活況のセンサ市場、ハードウェア企業はいかに競争力を維持するか

Greg Nichols (Special to ZDNET.com) 翻訳校正: 石橋啓一郎

2018-10-12 06:30

 米オレゴン州に本社を置くFLIR Systemsは、さまざまな用途のサーマルイメージング製品を製造しているセンサメーカーだ。同社は、機械学習と人工知能(AI)などを専門とするシンガポールのスタートアップCVEDIAに多額の戦略的投資を行っている。センサ業界によほど詳しくなければ、このような話はかなりニッチなニュースに見えるだろう。しかしこの取り組みは、センサ市場の競争激化とAIや機械学習技術の台頭で、この市場の情勢が変わっていることを示している。小規模な企業は、もはや優れたハードウェアだけでは生き残れなくなっているが、領域を絞り込んでハードウェアとスマートなAIエンジンをパッケージングすれば、スタートアップでも大企業と互角に戦えるようになった。

 FLIRは、現場での検査や消防活動などに使用する企業向けのサーマルイメージングセンサを製造している。同社のセンサにはさまざまなパッケージが存在し、中にはタブレットやスマートフォンの周辺機器として使用できるものもある。最近の同社は、LiDARと可視光カメラを使用する自動運転車に組み込むことで、死角を減らせるサーマルカメラを売り込もうとしてきた。

 これは難しいマーケティングだ。自動運転車を開発する企業を説得し、自動運転車でサーマルカメラを使ってもらうだけでも困難だが、その上に同社の製品を選んでもらう必要がある。この分野には、すでに競合企業のAdaSkyをはじめとするほかのサーマルセンサ企業が参入している。

 FLIRが選んだ道は、別の企業であるCVEDIAに投資し、同社のセンサに、プラグアンドプレイで利用できる、物体認識などの自動運転に関するAIと機械学習の機能を組み込んで差別化することだった。FLIRは、自動運転車を手掛けている企業の開発の負荷を減らしつつ、さまざまな自動運転アーキテクチャに最大限に適応可能なセンサを作れば、自動運転の分野で競争力の高いサーマルセンサメーカーになれる可能性があると考えた。

 これは、従来のセンサ企業がとってきた、できるだけ多くの用途に利用できるように、タスクに依存しない製品を作るというモデルからの脱却であり、センサ市場の競争が厳しくなっていることを示している。

 用途が限定的な機能を持たせた製品のパッケージングを行っているセンサ企業の例は、ほかにもある。Viscandoは3Dビジョンセンサを製造している企業だ。この市場は、IntelがAIエンジンが組み込まれた「RealSense」を使用した3Dビジョンカメラを投入したことで、競争が激しくなっている。

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