英国ではフルタイムで働く従業員の3分の2がすでに何らかの形で柔軟性がある働き方をしており、そのような働き方を望んでしている従業員も多い。では最高情報責任者(CIO)は、従業員や企業が満足できる柔軟な働き方の戦略作りにどう関わればいいのだろうか。4人の専門家に話を聞く。
1.戦略を支えるポリシーを策定する
英国の医療機関Liverpool Women's NHS Foundation TrustとRoyal Liverpool and Broadgreen University Hospitals NHS TrustのCIOを務めるDavid Walliker氏によれば、柔軟な働き方を支えることは、同氏が関わる病院の「大きな課題」だという。同氏は、CIOは新たな勤務形態を支えるポリシーと技術を整備すべきだと述べている。
「IT部門の観点から見れば、デバイスが定期的に監査されていて、セキュリティが確保されている限り、スタッフがどこで働いていても構わないのではないか」とWalliker氏は言う。「われわれは、スタッフが家にいようが出張先にいようが、使っているノートPCに接続して問題を解決できる。私は柔軟な勤務形態を全面的に支持する。ただ、柔軟な働き方という考え方が広まったのはいいが、われわれはさらに細かく検討していく必要がある」
Walliker氏によれば、同氏が関わるどちらの病院のスタッフも、自宅でもオフィスと同じように働くことができるという。本当に問題になるのは、医療画像を細かく分析する放射線科医のような、仕事に特定分野の専門家としての知識が必要となる場合だ。そして、柔軟な働き方を実現する取り組みは、この分野でも進んでいる。
「われわれは、Royal Liverpool and Broadgreen University Hospitals NHS Trustの自宅待機中の放射線科医が家で使えるデバイスを用意し、呼び出しがあった際には、自宅で医療画像を見てアドバイスをし、すぐにベッドに戻れるようにしている」とWalliker氏は説明する。「2年前には、同じことをするには、スタッフが高品質な画像を見るために職場に来なければならなかった。今では、直接手を動かす必要がある臨床診療を別にすれば、もう職場に来る必要はなくなっている」
2.管理職のリーダーシップを高める
2018年までEDF EnergyのCIOを務めていたSarah Flannigan氏は、リモートワークを可能にしようとしているCIOに警告を発している。同氏は、柔軟な働き方戦略が成功するかどうかは、信頼できる上司次第だと述べ、同氏がさまざまな組織に外部の顧問としてアドバイスをしてきた経験から、成功の度合いには幅があると語った。