ServiceNow Knowledge

デジタル的働き方のプラットフォームになるサービスナウ--AI展開を本格化

國谷武史 (編集部)

2019-05-08 13:31

 ServiceNowの年次カンファレンス「Knowledge 19」が米国時間5月7日、ネバダ州ラスベガスで開幕した。同日の基調講演ではプレジデント兼最高経営責任者(CEO)のJohn Donahoe氏が、「ワークフローのデジタル化」をテーマに、人工知能(AI)やモバイルなどのテクノロジーが今後の企業にもたらす働き方の姿を提示した。

 今回は9日までの会期中に600以上のブレイクアウトセッションが開かれ、約80カ国から2万人以上が来場している。日本からも顧客やパートナー企業関係者など約200人が参加。日本法人社長の村瀬将思氏は、「日本から参加は全体の1%ほどでまだまだこれから」と話すが、前回参加の100人強からは大幅に増加した。

 講演の冒頭でDonahoe氏は、「今はテクノロジーが企業を変える転換点にある」と述べた。同氏は2017年4月の就任以来、一貫してインターネットやモバイルが人々のライフスタイルや社会にもたらした大きな変化を今度は仕事のシーンにもたらすことが同社の役割だと提唱している。

「Knowledge 19」基調講演に登壇したServiceNow プレジデント兼最高経営責任者のJohn Donahoe氏
「Knowledge 19」基調講演に登壇したServiceNow プレジデント兼最高経営責任者のJohn Donahoe氏

 2007年に登場したiPhoneが転換点であり、その後のスマートフォンの普及拡大によって、人の行動様式は新聞からニュースアプリへ、店舗からECサイトへ、映画館から動画配信サービスへと変わった。「これはたったの12年で起きた変化だ」とDonahoe氏。一方で現在の企業は、例えば、社員がパスワードを忘れればIT部門にリセット作業を求めたり、オフィスの備品が壊れたら管理部に修理を依頼したりしている。日常の生活シーンがデジタル化されたのに、企業の中では相変わらず人手に任せきりだと指摘する。

 「Amazonで商品を探し、購入すれば数日で配達される。このシンプルなユーザーのデジタル体験が実現された背景には、Amazonが商品を提供するまでに要する膨大かつ複雑なシステムやプロセスなどをデジタル化されたワークフローとして確立できたからだと言える。しかし、仕事の現場ではそれらを人に丸投げしている。これが現在の企業における一番の課題だ」(Donahoe氏)

 同氏は、企業におけるデジタル時代ならではのシンプルなワークフローを実現するのが、ServiceNowの中核となる「Now Platform」だと強調した。

ワークフロー視点のPaaSとソリューション群

 ServiceNowは、主にITサービス管理(ITSM)やIT運用管理(ITOM)のSaaSで成長し、近年は人事やサイバーセキュリティ、リスク管理などにも提供範囲を広げる。これらSaaSの基盤となるのが「Now Platform」で、Now PlatformはいわばPaaSに当たる。

 元々は創業者のFred Luddy氏が開発し、Now PlatformをベースにITSMのSaaSを開始したことが同社の成長の契機になった。さまざまなシステムの異なるIT運用管理ツールから構成情報などをNow Platformに集約し、ここで一元的に運用管理することで属人的作業を強いられたIT担当者の負担を軽減する。業務量に余裕が生じれば、担当者は新システムの戦略を検討するなど高い生産性や成果につながる仕事へリソースを集中できる。これがNow Platformのコンセプトになった。

 Now Platform責任者を務めるバイスプレジデント兼プラットフォームビジネス部門ゼネラルマネージャーのJosh Kahn氏は、「Now Platformはワークフローとユーザー体験に特徴がある当社、パートナー、ユーザーのためのPaaSになる」と話す。同社では、Now Platformにモバイルアプリ基盤やAI/機械学習あるいはバーチャルアシスタントといったテクノロジーを取り込み、APIなどを通じてシステム管理ツール類だけでも90種類以上、SaaSやIaaSのパブリッククラウドとデータ連携している。

「Now Platform」とデータ連携するIT管理製品やサービスは約90種類あるという
「Now Platform」とデータ連携するIT管理製品やサービスは約90種類あるという

 PaaSとしては、Now Platformの他にもCloud Foundryなど有力なサービスやフレームワークが存在している。Kahn氏によれば、Now Platformと他のPaaSは競合ではなく、そもそも性格が異なるという。

 「Now Platformはノンコードでのシンプルなアプリ開発向けだ。ユーザーがワークフローや目的を設定すれば、後はデータベースが準備され、ビルトとデプロイが行われる。他のPaaSでは開発者がコードを使って複雑で高度なアプリを開発できる。Salesforce.comに似ているとも思われるが、彼らはCRM(顧客関係管理)フォーカスで、Now Platformはワークフローにフォーカスしている点が異なる」(Kahn氏)

Now Platform責任者を務めるバイスプレジデント兼プラットフォームビジネス部門ゼネラルマネージャーのJosh Kahn氏
Now Platform責任者を務めるバイスプレジデント兼プラットフォームビジネス部門ゼネラルマネージャーのJosh Kahn氏

 上述のようにNow Platformは、ServiceNowのSaaS基盤以外に、パートナーのサービス基盤でも導入されているという。直近の事例では、5月7日にNTTコミュニケーションズ(NTT Com)が開始した「Global Management One ITSM Platform」があり、NTT Comは国内のデータセンターにNow Platformを導入してこの新サービスを展開する。

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